2023年3月21日(火)
仏年金改革強行に国民反発
反対デモ・スト相次ぐ
下院で不信任案審議
フランスのマクロン政権が16日、年金改革法案について、憲法の強権的な条項を適用し、投票なしで国民議会(下院)を通過させたことに、国民の強い反発が続いています。年金改革に反対して共同行動をとってきた労組は、17~19日に各地での行動を呼びかけ、23日に撤回を求める全国規模の行動を呼びかけています。
改革は、年金受給開始を現行62歳から64歳に引き上げる内容。最近の世論調査では、国民の約7割が反対しています。
過半数割れしている与党は、右派野党を抱き込んで上院で法案を通過させましたが、下院ではこの右派野党から反対に回る議員が出る可能性があったことから、採決を回避することを選択。社会保障財政法案について、採決しなくても首相の責任で「採択されたとみなす」ことができる憲法49条3項を適用しました。
野党は内閣不信任案を下院に提出し、20日に採決される予定です。可決されれば年金改革法案も無効になりますが、採択の見通しは厳しいとみられています。
18日に労組が呼びかけたパリの集会では、参加者が「マクロンは辞任せよ」「マクロンは崩壊、われわれは勝利する」と唱和しました。警官が催涙ガスや警棒でデモ隊を弾圧する画像がSNSで拡散し、怒りが広がりました。
年金改革に反対する労組のストは、製油所、貯油施設などで続き、水力・火力・原子力発電所ではストや出力の大幅削減が行われています。パリ市内では、ごみ収集員や焼却場のストで、ごみ袋が路上に山積みとなっています。
街頭では一部のデモがゴミに放火するなどし、警官隊と衝突。労組や左派政党は暴力行為を批判しています。
ただ国立科学研究センター(CNRS)で警察の力の行使について研究するファビアン・ジョバール研究員は、治安状況の悪化について「憲法49条3項の発動で事態は変わった。これまで政府は『法律は街頭ではなく、議会でつくられる』と言ってきた。それはもう当てはまらない。代議制民主主義への信頼の喪失から、本当の過激化がもたらされる」と指摘しています。