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2023年3月21日(火)

主張

袴田さん再審確定

無罪に向けた扉大きく開いた

 1966年に静岡県の一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑判決が確定した袴田巌さん(87)の裁判のやり直しを認めた東京高裁決定が確定し、静岡地裁で再審公判が始まることが決まりました。無実を訴え続けた巌さんと姉の袴田ひで子さん(90)の粘り強いたたかい、再審・無罪を求める世論と運動の広がりが、東京高検の特別抗告を断念させました。

 無罪へ向けての扉が大きく開かれた今、早期に無罪を確定し、冤罪(えんざい)被害を一刻も早く回復することが必要です。

不当な引き延ばしできず

 東京高裁は13日、巌さんを有罪とした死刑確定判決には「合理的な疑いが生じる」とし、再審開始を認める決定をしました。

 確定判決は、被害者のみそ工場のタンクから見つかったシャツやズボンなどを有罪の有力な証拠としましたが、高裁決定は、巌さん以外の第三者が事件から相当期間経過した後にタンクに隠匿した可能性は否定できないとしました。第三者は捜査機関の可能性が極めて高いとも指摘しました。

 捜査機関による証拠の捏造(ねつぞう)によって、無実の人を死刑に追い込むことは絶対に許されない行為です。検察は、再審開始の高裁決定を真摯(しんし)に受け止め、巌さんの救済に向けて真剣に努力する責任があります。検察は再審公判で有罪立証を見送る方針と報じられています。なぜ冤罪を引き起こす捜査を行ったのかも徹底的に検証すべきです。長時間にわたる取り調べによる自白の強要などへの反省も不可欠です。

 巌さんの再審請求では2014年、静岡地裁が再審開始の決定を出しました。この決定でも、シャツなどの赤みの不自然さを指摘し、捜査機関による証拠捏造の疑いを指摘していました。ところが検察側の抗告を受けて18年に東京高裁は再審開始決定を取り消します。これに対し最高裁が20年に審理が尽くされていないと東京高裁に差し戻し、今回の再審開始決定となりました。静岡地裁の再審開始決定からすでに9年が費やされていることは深刻です。

 事件発生から57年、死刑が確定した1980年から40年以上も経過しています。巌さんは2014年の静岡地裁決定で釈放されましたが、高齢化している上、50年近い獄中生活によって心も体も健康状態は悪化しています。死刑の恐怖にさいなまれた心理的負担は計り知れません。

 罪を晴らすために再審無罪を訴え続けてきた巌さんにも、ひで子さんにも残された時間はわずかしかありません。

欠陥ある制度を改めよ

 再審は、間違った判決で罪を着せられた冤罪被害者を救うための「最後のとりで」とされます。しかし、日本の再審制度は欠陥を抱えており「開かずの扉」と批判されています。巌さんの再審をめぐる経過も、無実を求める人の救済の道がなかなか開かれない実態を浮き彫りにしています。

 1949年施行の現行刑事訴訟法は、再審の規定について一度も改正されていません。公判に提出してこなかった証拠の開示を義務づけるルール、検察の再審開始決定への不服申し立ての禁止などの明記が急務です。

 冤罪被害を二度と繰り返さない取り組みがいよいよ重要です。


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