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2023年3月18日(土)

仏年金法案 重大局面

国民・労組の抗議広がる

政権、下院で強権発動狙う

 フランスで、年金受給開始を62歳から64歳に引き上げる法案が重大な局面を迎えています。ボルヌ内閣は16日、右派が多数を占める上院で国民多数が反対する法案の採決を強行しました。さらに賛成多数の見込みが立たない国民議会(下院)で、憲法の強権条項を発動し、議員による賛否の採決なしの特別措置を強行することを決定。国民・労働者の怒りは広がっています。(米沢博史)


 年金改革法案は15日、政府が右派野党を取り込んだことにより、上下両院の代表14人による両院協議会の多数決で承認されました。

 政府は翌16日午前、ただちに上院で採決を強行。賛成193、反対114で採択されました。午後には、マクロン大統領がボルヌ首相と3度も協議し、国民議会が否決した場合、「経済や財政のリスクが高い」として、“行政権の優越”条項である憲法49条3項の発動を指示しました。

 同条項の発動は、内閣が信任されることが条件です。労組の反対運動と連携して国民議会で反対の先頭に立ってきた左翼会派連合の「環境と社会の新人民連合」(NUPES)は、反対派が共同提出する内閣不信任案が可決されるように、他会派議員への働きかけを強めています。20日にも内閣不信任案が採決される見込みです。

 労働総同盟(CGT)のフィリップ・マルティネス書記長は16日、政権による「この国民無視に見合う」大きな抗議を改めて呼びかけました。

 両院協議会が行われた15日には、主要8労組が呼びかけた年金改革法案反対の第7回全国行動が各地で行われ、主催者発表で170万人が参加しました。強行採択を決定した16日には、全国各地で緊急の抗議集会が行われました。交通や電気などの基幹産業でのストライキも継続され、一部地域では停電も発生しました。

 パリ交通公団に勤めるアンジェリーヌ・アレさん(48)は、「首相は爆弾を仕掛けたのです。怒りはさらに広がるでしょう。内閣は総辞職すべきです」と現地メディアに語りました。

 有力紙「ルモンド」電子版は16日、「49条3項の発動はマクロン大統領の孤立を明らかにするもの」と題するマチュー・ゴール論説委員の論評を掲載。ビジネスニュース専門チャンネルのBFMTVは15日、国民の67%がストやデモなどの反対運動を支持しており、62%が法案の採択後も反対行動を続けるべきだとする世論調査を発表しました。

 主要8労組は来週23日に第8回全国行動を実施するなど、抗議行動の継続と結束の強化を決めました。


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