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2023年3月18日(土)

主張

入管法の改定案

人権・尊厳奪う法案再び廃案に

 岸田文雄政権が入管法改定案を国会に提出しました。2021年に世論の批判を浴びて廃案になった改定案とほぼ同じ内容です。世界でも異常に低い難民認定率などの非人道的な入管・難民行政を改めないどころか、外国人の人権侵害をいっそう深刻化させようとしていることは重大です。

 国際的な人権水準にかなう入管・難民行政を求める運動が広がっています。入管法改定案を再び廃案に追い込むことが必要です。

国際的な批判にこたえず

 改定案では、難民認定申請中は送還が停止される規定(送還停止効)に例外を設け、3回目以降は申請中の送還を可能にします。

 国際社会は、日本が条約上の「難民」を限定的に解釈し、難民認定率を著しく低くしていることを、痛烈に批判しています。送還規定の改悪は、迫害を受ける恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約第33条に明らかに反します。

 自主的に退去しない外国人に罰則を科す退去命令制度を創設します。迫害の危険があったり、幼い頃から日本で育ち日本語しか話せなかったりする外国人らを「送還忌避者」として罰することは、極めて不条理です。

 在留資格のない外国人全てを収容・送還する「全件収容主義」の考えは変えません。退去強制手続きを進める監理措置制度を新設します。収容しないものの、入管庁は親族や支援者を監理人に選定し、場合により外国人の生活状況の報告を義務付けます。支援者らに監視する役目を負わせることは外国人の保護とは相いれません。

 収容か監理措置かを判断するのは、裁判所でなく入管庁です。入管庁の広範な裁量は温存されます。収容期間に上限のない非人間的な扱いが続く懸念は消えません。入管庁の恣意(しい)的判断を許す仕組み自体を根本から正すべきです。

 改定案が廃案になった2年前の国会審議では、名古屋入管でスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが点滴など適切な医療を受けられず、飢餓状態で死亡する痛ましい事件が起き、入管行政のあり方が根本から問われました。入管庁は真相究明につながる資料を出さず、事件をめぐる入管の報告書に真実に反する記述があると指摘されても反省がありません。

 法案では、3カ月ごとに収容の要否を見直すとしていますが、長すぎます。ウィシュマさんは入管庁の記録でも1カ月強で急激に体調が悪化しています。

 仮放免制度の見直しも問題です。外国人に過大な負担を強いた保証金を不要とする一方、逃亡などに罰則を設けます。法務省には外国人が逃亡せざるを得なかった原因を分析する姿勢がありません。厳罰化は許されません。

行政のあり方の転換こそ

 人権と尊厳を無視する入管にハンガーストライキで抗議する収容者が後を絶ちません。被収容者の生命・身体の安全や健康に向き合うどころか、詐病扱いするなど人権と尊厳を踏みにじる姿勢を改めることなしに、国民の信頼を得ることはできません。

 改定案は4月に衆院で審議入りする予定です。運動をさらに広げ、外国人の命を危うくする改定案の成立を阻止しましょう。今度こそ外国人の人権保障の観点にたち、入管行政自体を抜本的に改めなければなりません。


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