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2023年3月17日(金)

きょうの潮流

 奇抜な映画です。もしも、あのとき、別の選択をしていればちがった人生を歩んでいたかもしれない…。だれもが一度は思い描く世界が、物語の出発点になっています▼アカデミー賞の作品賞に選ばれた「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。なんでも、どこでも、いっぺんに、という意味で、この世界には無数の並行した宇宙があり、そこで私たちはそれぞれの人生を送っているという設定です▼ややこしい展開のなかに浮かんでくるテーマは家族の再生と人生の肯定。そこで重要な役割を果たすのが主人公の夫です。30年ぶりに俳優に復帰したキー・ホイ・クァンさんが演じました▼「私の旅はボートの上から始まりました」。助演男優賞を受けたクァンさんはスピーチで自身のルーツをふり返りました。幼少期にベトナム戦争の混乱から逃れるため、家族と国を脱出。難民キャンプでくらしたのちに米国へ▼一時は子役で人気を博しましたが、アジア系俳優ということで役に恵まれず長く不遇の時代をすごしました。久々の抜てきでオスカーを手に「こんなことが自分の人生に起きるなんて、信じられない」と▼映画では主役のミシェル・ヨーさんもアジア系として初の主演女優賞に。共同監督の1人も中国系移民の息子とアジア系が席巻、多様性を重視する近年のアカデミー賞の流れに乗っていました。米国社会や世界で人種差別や憎悪犯罪が続くなか、自分とはちがう人生を想像することの大切さを教えてくれます。


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