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2023年3月11日(土)

きょうの潮流

 歴史を今に受け継いで/未来を見つめ意気高く/鴎(かもめ)のごとく羽ばたかん―。沿革とともに刻まれた校歌。学校の入り口に建てられた真新しい閉校の記念碑です▼石巻市の牡鹿(おしか)半島にある荻浜(おぎのはま)中学校は今月、41年の歴史に幕を下ろしました。天然の良港に恵まれ漁業やカキの養殖が盛んな地域でピーク時には60人をこす生徒が学びました。しかし東日本大震災の後に激減。最後の在校生はわずか3人でした▼「震災がなければここまで生徒も減らず、もっと続いていたと思う」。荻浜中の教頭はそう話します。同じ地域の東浜小も今月で閉校。今年度で閉じる宮城県内の小中は10校をこえ、とくに人口減少が激しい沿岸部では学校の統廃合が進みます▼福島・富岡町のアーカイブ・ミュージアム。町の歴史や特徴、つみ重ねてきた営みを伝えます。しかし周りには朽ちた家が目立ち人影も見えません。原発事故で全町避難しましたが、戻りたいという町民は1割にも満たないのが現状です▼巨大な防潮堤、道路や宅地が造成されても人が減っていく被災地。それぞれの自治体や若者たちが魅力あるまちづくりに努めていますが、そこに冷や水を浴びせているのが生業(なりわい)の基盤を築けない地方切り捨ての国の姿勢です▼いわき市薄磯(うすいそ)海岸にある震災伝承館。そこに子どもたちの未来へのメッセージを込めた300枚の黄色いハンカチがはためいています。「大好きなふるさとをずっとずっと残して」。あの日から12年。被災地から発信された心のさけびです。


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