2023年3月10日(金)
主張
民間の空襲被害者
政府はいつまで放置するのか
1945年3月10日未明の東京大空襲からきょうで78年です。米軍の無差別爆撃で、東京・下町は火の海となり、一夜で約10万人もの命が奪われました。名古屋、大阪、神戸など各都市も敗戦まで米軍の空襲にさらされました。あまたの命が犠牲となり、多くの市民が傷を負い、家族を失い、焼け出されました。無数の子どもが孤児になりました。日本政府は民間の空襲被害者に何の救済もしていません。空襲は、国が始めた戦争の帰結です。高齢となった被害者が存命しているうちに、政府は責任を認めて謝罪、補償し、被害の実態調査に取り組むべきです。
「納得できない」と憤り
全国空襲被害者連絡協議会(空襲連)は3日、都内で集会を開きました。吉田由美子共同代表(81)は、進まない救済に「こんなにも長く放置され続ける理由を聞かなければ納得することはできません」と憤りました。吉田さんは東京大空襲で父母と3カ月の妹を失い、3歳で孤児になり、預けられた親戚宅で虐待を受けました。「親たちはちっちゃな子を残して、どれだけつらい思いをし、悔いを残して逝ったか。死んでも死にきれなかったんじゃないでしょうか」
日本政府は元軍人・軍属には恩給・年金などで補償を続けています。しかし民間の空襲被害者には「戦争被害は等しく受忍すべきだ」などと救済を拒んでいます。
空襲連は被害者を差別する国に「法の下の平等」を訴え、粘り強く救済法制定を求めています。4年前から国会開会中の毎週木曜日に議員会館前で「こんにちは活動」を実施しています。2月16日に100回を迎えました。「こんなに長くなるとは思わなかった」。議員立法による救済法案提出の期待を何度も裏切られながらも、80歳を超える被害者たちは支援者とともに通行人に声をかけ、空襲連のリーフレットを手渡します。
超党派の議員連盟は空襲などで心身に障害を負った民間被害者への一時金支給、被害の実態調査、追悼施設の設置を柱に法案をまとめています。同じ敗戦国のドイツやイタリアは「国家賠償」として空襲被害者を救済しています。
空襲議連前会長の河村建夫元官房長官(元自民党衆院議員)は3日の空襲連の集会で「主要国は何らかの形で戦争被害者に対応している。日本が何もしなくていいというわけにはいかない」と述べ、「(法案に)野党はほぼ賛成で問題は自民党にある」と発言しました。議連会長代行の平沢勝栄衆院議員(自民党)も「自民党の責任も極めて大きい」と語りました。日本弁護士連合会の小林元治会長は「民間戦災者をこれ以上置き去りにし続けることは、国としての道義と正義を保持する機会を永遠に失わしめることとなる」とのメッセージを集会に寄せ、今国会での成立に向け連帯を表明しました。
願いをこれ以上裏切るな
空襲による遺族や孤児は同法案の対象外です。それでも彼らは法案の成立を強く求めます。空襲の被害自体がなかったことにされかねないからです。岸田文雄政権は日本を再び「戦争する国」に変貌させようとしています。「二度と戦争を起こさせない」と運動してきた空襲被害者の心からの願いを裏切るものです。首相は78年前に市民が受けた戦争被害をいまこそ直視しなければいけません。








