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2023年3月8日(水)

国保料 こうして減免 名古屋市にみる

一般会計からの繰り入れ 保険料算定巡り独自控除

カギは市民運動と共産党議員団

 高すぎる国民健康保険(国保)料・税の負担軽減は統一地方選の一大争点です。名古屋市は独自の控除制度と減免制度をつくり、多人数世帯やひとり親・障害者世帯の保険料を他都市と比べて低く抑えています。市民の運動と日本共産党市議団の論戦による大きな成果です。(大串昌義)


所得激減にも対応

表1

 市町村は国保料・税の値上げ抑制のために一般会計から国保会計への繰り入れ(法定外繰り入れ)を行っていました。しかし、2018年度からの国保の都道府県単位化により、政府は法定外繰り入れに“ペナルティー”を与え、全国の過半数の自治体でこの間、値上げされました。

 名古屋市では市民団体や労組などでつくる「名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会」が08年の結成以来、高すぎる保険料を引き下げるために、一般会計からの繰り入れを求めてきました。

 市議会では他党が国保関連の質問を一切しない中、日本共産党市議団が毎議会追及してきました。

 市は運動と論戦に押され、10年度から法定外繰り入れで被保険者全員の均等割3%減免を実施。独自の減免制度を徐々に拡充させ、他都市を超える充実した制度に発展しています。所得激減による減免制度もその一つで、他都市と比べて優れた要件となっています。(表1)

 18年からは、国・県から“ペナルティー”を科されない法定外繰り入れ(決算補填〈ほてん〉等以外の目的の法定外繰り入れ)に力点を置いて運動してきました。

 減免制度に、コロナ禍で打撃を受けた事業者から喜びの声があがっています。

 同市北区のカラオケ居酒屋経営者は、県の休業協力金を受けたことで国保料も高くなりました。22年7月、市独自の所得激減による減免制度を区に申請。国保料が月8万7000円から5万7600円に3割以上減額され「国保料の値下げは助かりました」と語りました。

署名と要請を毎年

写真

(写真)「名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会」の人たちと、日本共産党市議予定候補の(右端から)山口きよあき、岡田の両氏=名古屋市役所

表2

 「名古屋の国保と高齢者医療をよくする市民の会」加盟団体の愛知県社会保障推進協議会の澤田和男副議長は「名古屋市独自の減免制度と独自控除は私たちの運動と共産党の論戦で実現したかけがえのない宝物です」と話します。

 市の国民健康保険に30万2500世帯・43万8700人(21年度平均)が加入しています。国保料は給与収入400万円の4人世帯で年35万2200円と、東京や大阪より約10万円低くなっています。(表2)

 理由の一つは法定外繰り入れによる減免制度。もう一つは、国保料算定の基礎となる所得額について扶養家族・障害者・ひとり親がいる世帯に配慮した独自の控除制度です。(表3)

表3

 控除制度創設は市民の運動がきっかけでした。市が13年度に提案した所得割の算定方式の変更が「大幅な保険料値上げを招く」と大々的に反対運動を展開。共産党は負担増問題を厳しく追及し、独自控除が新設されました。

 「市民の会」は毎年、市議会に向けた請願署名と、市保険年金課、全16区への要請行動などを展開してきました。

 「市民の会」に参加する市職員労働組合の津田康裕委員長は「名古屋市レベルで市にずっと働きかけている住民運動は貴重です」と強調します。県社保協の小松民子事務局長は「名古屋独自の減免制度と控除制度を全国に知らせながら、国に公費増額を求める運動を広げたい」と意気込みます。

写真

(写真)中村区に要請する「市民の会」の人たち(こちら向き)=22年12月22日(「市民の会」提供)

議会で再三の要求

 日本共産党市議団はこの間、国保改善で実績を挙げてきました。新型コロナに関連した国保の資格証明書の取り扱いについて、20年3月の代表質問で「受診が抑制されないよう資格証明書世帯に短期保険証を発行すべきだ」と追及。「国保料を支払えず資格証明書を交付された人は、医療費の全額をいったん窓口で自己負担しなければならず、受診を控えれば重症化や周囲への感染拡大が懸念される。制度の廃止を求めたい」と訴えました。

 これにより、最近10年間、4000件前後だった資格証明書の発行が20年6月267件に。市は同年9月以降、コロナ感染症と無関係に発行中止に踏み切りました。

 22年11月議会で田口かずと市議団長は「23年度から(世帯人数が増えるごとに保険料を課す)均等割額の引き下げ率を10%にすべきだ」と迫りました。

 名古屋市の保険料は、多人数世帯などでは他都市より低くなったものの、単身では変わらず、特に若年の非正規労働者は負担が重くなっています。

 統一地方選で日本共産党は、国保料の引き下げを実現するため、県議選(定数102)で2議席回復、名古屋市議選(定数68、現有4)で前回獲得した5議席を絶対確保し、6議席以上を目指します。岡田ゆき子市議は「国保改善を市・国に求める議席が必要です」と力を込めます。

 一般会計からの繰り入れ(法定外繰り入れ) 政府から“ペナルティー”を科される「決算補填等目的」と、科されない「決算補填等以外の目的」の2種類があります。前者は20年度までの7年間で市町村、総額とも4分の1以下に激減する一方、後者は総額を維持しています。全国市長会は「(法定外繰り入れの解消は)保険者(市町村)の苦境と被保険者(加入者)の負担感に配慮したものではなく、地方分権の趣旨に反すると懸念される内容も散見される」と国へ意見を出しています。


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