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2023年3月7日(火)

主張

神宮外苑再開発

都心の3千本超の木々守ろう

 樹齢100年の美しいイチョウ並木やケヤキ、ヒマラヤスギなどの木々が茂る「都心のオアシス」が再開発の波にのみ込まれようとしています。東京都新宿区と港区にまたがる神宮外苑です。

 神宮外苑は、全国各地からのお金や樹木の寄付などによってつくられた文化遺産であり、都民がスポーツに親しめる拠点でもありました。ここに神宮球場と秩父宮ラグビー場を入れ替え、190メートル級のビル2棟を含む4棟のビル・ホテルを建設する大開発が進行中です。公共的な役割を投げ捨て、自然や景観を破壊する開発に反対の声がわきあがっています。

スポーツの聖地失う危険

 開発計画にはさまざまな問題点が浮上しています。なにより貴重な木々が失われます。当初伐採等の危機にある樹木は約1000本といわれていました。事業者が先ごろ新宿区に出した許可申請では、3メートル以下の低木も含めるとその数は約3000本にも及ぶことがわかりました。今回の許可申請は一部エリアにとどまります。全体ではさらに増える見込みです。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関、日本イコモス国内委員会は「事業者の環境影響評価書には、生態系の調査や樹木の保全など虚偽がある」と厳しく指摘し、都の審議会に再審査を要請しています。しかし、三井不動産や明治神宮などの事業者は指摘にまともに答えないまま、都は2月17日に施行を認可しました。

 この地は貴重な自然環境を守る地域の風致地区に指定され、建物の高さ制限などがありました。しかし、都は規制を緩め、容積率を積み増しできる制度を適用し、高層ビルを建てられるようにしました。ゼネコン奉仕ともいえる都の責任は極めて重大です。背景に、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗元会長の関与があることも日本共産党都議団の調査・論戦で明らかになりました。

 計画は当初から住民に周知されず、事業者の情報開示も説明も不十分で、ビル風の影響や都民のスポーツする場が奪われるなど多くの問題が積み残されています。2月末には、「東京の宝石が壊される」とする周辺住民60人が、都の施行認可手続きは違法とする訴訟を東京地裁に起こしています。

 建て替えられる球場やラグビー場にも批判の声が上がります。スポーツジャーナリストのロバート・ホワイティングさんは、「『野球の聖地』―伝統ある、緑の神宮球場を守ろう」と提唱し、ラグビー元日本代表の平尾剛さんは競技よりもうけ優先の実態を示して「『ラグビーの聖地』の移転・改悪を止めよう」と呼びかけました。2人はそれぞれオンライン署名を実施しています。現在、「神宮外苑1000本の樹木を切らないで」の署名と合わせ、賛同者は15万人を超えました。

直ちにストップせよ

 日本共産党は当初から再開発に反対し、都議会で追及してきました。2月には笠井亮衆院議員が予算委員会で「歴史的、文化的、国際的な価値」を有する神宮外苑の緑を守るよう西村明宏環境相に強く迫りました。昨秋、見直しを求める超党派の国会議員連盟が結成され、施行認可以降も反対の声が高まっています。自然を破壊し、住民合意のない乱暴な再開発はすぐにストップすべきです。


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