2023年3月4日(土)
きょうの潮流
かつては岩手の下閉伊郡に置かれ、いまは宮古市と合併した田老(たろう)町。復興とともに歩んできた第一中学校の校歌にこんな一節があります。「防浪堤を仰ぎみよ 試練の津波幾たびぞ 乗り越えたてしわが郷土 父祖の偉業や跡つがん」▼1933年3月3日、東北の太平洋沿岸をおそった昭和三陸津波。はげしい揺れの30分後に到達した津波は岩手、宮城を中心に3千人以上の命を奪いました。なかでも最も被害が大きかったのが当時の田老村でした▼住民の3割をこす千人近くが犠牲となり、村はそっくり波にさらわれました。その後、万里の長城と称された防潮(浪)堤が築かれる一方で、高台への住居移転は見送られていきます。侵略戦争の拡大に伴う資金や資材の枯渇も背景にありました▼しかし巨大な防潮堤は、東日本大震災で倒壊。ふたたび壊滅的な被害にみまわれました。いまはさらに高い防潮堤がつくられ、高台移転も進んでいます▼昭和三陸津波から90年。いま田老では伝承のためのイベントが開かれています。何度も甚大な被害を受けてきた町として何を伝えていくべきか。命を守る教訓を語り継いでいくのは、われわれの責務だと▼今年は関東大震災から100年でもあり、復興そのものを問い直す機会にもなります。もうすぐ12年となる東日本大震災では、人口も産業も拡大しているときの復興策を相変わらず踏襲しているとの批判もでています。教訓を引き継ぎながらも、時代の変化に応じた復興の姿が求められています。








