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2023年3月3日(金)

主張

学術会議法見直し

独立性を壊す改悪を断念せよ

 岸田文雄政権が日本学術会議の独立性を壊す重大な法改悪を企てています。学術会議は昨年12月21日の総会で「強く再考を求めたい」とする声明を採択しました。内閣府が2月16日に示した「日本学術会議法の見直しについての検討状況」に対しても学術会議は22日、「懸念事項」を発表しました。そこでは懸念を「より深めるもの」だと批判し、今国会への法案提出の断念を求めています。岸田政権はこの声を受け止めるべきです。

介入の仕組みを法制化

 内閣府の「検討状況」によれば、法改定で選考諮問委員会を新設します。学術会議の会員、連携会員以外で構成し、会員候補の選考プロセスや内容について意見を述べることができ、学術会議はそれを尊重しなければなりません。

 同委員会の委員は「広い経験と高い識見を有するもの」とされます。研究実績のある科学者以外の政府や経済界の関係者が会員選考に介入できることになります。委員任命に至る手続きに政府が関与することも否定していません。学術会議が自律的に独立して行う選考に重大な制約を課すものです。

 しかも、学術会議が選考諮問委員会の意見と異なる選考を行った場合は、それを口実に首相が任命を拒むことにつながります。任命拒否を正当化する仕組みの法制化にほかなりません。

 2月27日の衆院予算委員会で日本共産党の宮本徹議員は政府方針の問題点を追及しました。岸田首相は、政府による介入の危険性についての答弁を避け、「選考プロセスの透明化を図る」ためと繰り返しました。「透明化」を言うなら、菅義偉前首相が理由も示さず6人の会員候補の任命を拒否したことこそ撤回すべきです。

 政府の動きに対し、学術会議の独立性を守るよう求める声が大きく広がっています。400を超える学会・団体や日本弁護士連合会から声明が上がっています。2月14日に学術会議の歴代会長5氏が、首相に対して学術会議の「独立性および自主性の尊重と擁護を求める声明」を発表し、「根本的に再考する」ことを訴えました。

 ノーベル賞受賞者ら8氏は19日、声明「日本学術会議法改正につき熟慮を求めます」を発表しました。声明は「単に内閣府と日本学術会議との二者の問題ではなく、学術の独立性といった根源的かつ重要な問題」につながると強調し、「政府は性急な法改正を再考」するよう求めています。

 学術会議が「独立して職務を行う」(学術会議法第3条)ことは、戦前の学術研究会議(学術会議の前身)が政府の御用機関になって科学者を戦争に動員した教訓から定められたものです。独立性の破壊は、学術会議の存在意義を失わせます。

「学問の自由」脅かすな

 学術会議は「懸念事項」で、「現在のようなかたちで法改正が強行されるならば、それは日本の学術の『終わりの始まり』となりかねない」と表明しました。「学問の自由」が掘り崩され、「新しい戦前」に向かって科学が利用されることへの厳しい批判です。

 岸田首相は、宮本議員の質問に「期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進める」と答えました。学術会議の意思に反し、法案を提出することは許されません。


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