2023年3月2日(木)
主張
東京五輪談合起訴
不正まみれ 大会の闇解明せよ
東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、東京地検特捜部は広告最大手「電通グループ」、業界2位の「博報堂」など6社と、大会組織委員会の大会運営局元次長ら7人を起訴しました。独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪です。談合規模は約437億円にのぼります。東京五輪では贈収賄事件で、組織委元理事(元電通専務)と出版大手などの企業トップら15人が起訴されています。自民・公明政権が国策として推進した巨大イベントが不正と汚職の舞台にされたことは極めて重大です。多額の税金が投じられた大会の深い闇の徹底解明が急がれます。
「電通依存」のゆがみ
起訴状などによると、7人は、入札が行われたテスト大会の計画立案の支援業務や、随意契約だった本大会運営などの業務委託について受注調整をし、競争を制限しました。それを中心で取りまとめていたのが、起訴された組織委の森泰夫元次長(日本陸上競技連盟出身)と電通スポーツ局の逸見(へんみ)晃治元局長補でした。
捜査当局は、電通が組織委と一体となって談合を主導し入札を形骸化させたとの見方をしていると言われます。組織委の発注が始まる前の2016年に電通の社内会議では「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと書き込まれた資料が共有されたことも報道されました(「朝日」2月16日付)。広告業界で「ガリバー」と称され、圧倒的な力を持つ電通が、自社を優先するとともに、業界全体に利益が行きわたるよう受注を分け合うように調整していた構図が指摘されています。
談合があった場合は、ない場合の受注額より高い金額で落札されると言われます。東京五輪の大会経費は当初の予定よりも膨張したことが問題になっています。談合がどう影響したのか。国民負担に関わるだけに曖昧にできません。
浮かび上がるのは、電通に依存し続けた東京五輪のゆがんだ姿です。国際的なスポーツイベントを手掛けて業績をあげてきた電通は、東京五輪の招致段階から深く関わっていました。スポンサー選定や公式商品の審査などにあたる組織委マーケティング局には、電通からの出向者が数多くいました。組織委では「電通抜きでは考えられない」とことあるごとに発言した幹部もいたと報じられています。
出版大手や紳士服大手などの企業側から総額2億円近い賄賂を受け取った五輪組織委元理事の高橋治之被告の汚職事件も、電通出身の同被告の強い影響力が事件の背景の一つとなりました。電通に頼り切って監視機能が働かず、不正や汚職を防げなかった組織委の体質と姿勢が厳しく問われます。
国と都は説明責任果たせ
起訴された元次長がいた大会運営局の元局長は東京都の出向職員です。都の出向職員は他にも多くおり不正を見抜けなかった都の責任を問う声も上がっています。都が昨年末、公表した談合をめぐる調査報告書も不十分です。岸田文雄政権も究明は捜査任せです。
組織委は情報を開示しないまま昨年6月に解散しました。清算法人も重要な文書の公開に応じません。政府や都は姿勢を改め、全容解明の責任を果たさなければなりません。国内外の信頼を完全に失墜した今、30年札幌冬季五輪の招致は断念すべきです。








