2023年2月28日(火)
きょうの潮流
小林多喜二の「蟹工船」を読んだ時の衝撃がよみがえってきました。NHKのドラマ「ガラパゴス」を見た印象です▼織田裕二ふんする刑事が、非正規労働者の死の謎を追います。月収25万円をうたいながら、派遣会社が中間搾取するなどして、実際に手にするのは11万円。複数の人間が、部屋を仕切っただけのアパートで共同生活。派遣で働く人々の待遇は過酷です。人件費ではなく、「外注加工費」として処理されるに至っては、モノ扱い▼今や非正規労働者は全体の37%を占め、約2000万人を数えます。年収200万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は約1200万人。日本の産業を支える一翼を担いながら、冷遇される現実があります。格差と貧困は深刻です▼なぜ、このようなことがまかり通るのか。契機となったのは、1985年に自民党が主導して成立した労働者派遣法です。当時、多くの労働者や労働組合が反対しましたが、安い労働力を欲する企業の求めに国が応じて、システム化しました▼その後も労働法制の改悪は続き、非正規労働者が激増。日本を「成長できない国」「賃金の上がらない国」に押し下げています。独自の世界に閉じこもった“ガラパゴス”状態です▼ドラマは、厳しい環境にもひるまず、仕事への誇りを持ち続けた派遣労働者の姿を鮮明に描き胸打ちます。普通に仕事して、食べて生活できる。働く人々の当たり前の願いが実現できるように。人間らしく働けるルールづくりが切実に求められます。








