2023年2月28日(火)
自衛隊に個人情報6万人
北海道3市、周知せず提供
閣議決定で自治体動員
孫を制服で訪問に驚き
北海道の札幌・旭川・帯広3市が、自衛隊に募集のための個人情報約6万人分(2022年、表)を市民に周知せず提供していたことが本紙の取材で27日までに判明しました。市民からは「子どもの個人情報が市から提供されていたなんて知らなかった」「制服姿の隊員が孫を訪ねてきた」「子どもを戦争に巻き込ませたくない」など、怒りの声があがっています。(北海道・中上範子)
対象者 | 除外申請 | 提供 | |||
---|---|---|---|---|---|
札幌 | 満18歳 | 満22歳 | 小計 | ||
14540 | 17051 | 31591 | 2 | 31589 | |
旭川 | 満18歳 | 満22歳 | 小計 | ||
2448 | 2786 | 5234 | ― | 5234 | |
帯広 | 満18~32歳 | 小計 | |||
23179 | 23179 | ― | 23179 | ||
3市合計提供 | 60002人 |
「戦争に子ら巻き込むな」市民怒り
自衛隊はそれまで住民基本台帳を「閲覧」して募集のための情報を入手していました。ところが、3市では2022年5、6月に初めて自衛隊にたいして個人情報を「提供」する方法に変更しました。
対象年齢は、札幌、旭川の両市では満18歳(高校3年生)と満22歳(大学4年生)、帯広市では18歳から32歳までで、住民基本台帳に基づき、名前、住所、生年月日、性別が提供されました。
札幌市では、自衛隊への個人情報提供について市ホームページに掲載し、提供を望まない場合には「除外申請」ができるとしています。しかし、対象者に知らされていないため、「除外申請」はわずか2人にとどまっています。
旭川、帯広の両市では昨年、「除外申請」の受け付けさえ行わず、個人情報が市民に知らされないまま提供されていました。
両市の日本共産党市議団が、「提供すべきではない」と追及するなか、帯広市は今年度から「除外申請」を設けましたが、旭川市は「除外申請を検討する」にとどまっています。
自治体の対応が「提供」に変わった契機は、閣議決定(2020年12月18日)です。閣議決定では「自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要な資料の提出を防衛大臣から求められた場合については、市区町村長が住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化し、地方公共団体に令和2年(2020年)度中に通知する」としました。
国は、自治体を総動員しての隊員集めを、いま進めています。
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自衛隊にたいし市区町村長が「住民基本台帳の一部の写しを提出することが可能であることを明確化」し、地方自治体に通知するとした2020年の閣議決定。この決定を受け、防衛省と総務省の連名で各都道府県あてに「通知」(2021年2月5日)が出されました。
「通知」では、「資料として、住民基本台帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法上、特段の問題を生ずるものではない」としています。
「通知」を受け変更
札幌市では、「閲覧」から「提供」に変更した理由についてホームページで次のように説明しています。
2021年度までは住民基本台帳の一部写しの提出について「事務の目的の範囲を超える」との判断から行ってこなかったが、「通知」によって提出が可能であることが明確化されたため、「情報提供の方法を変更」したと。
「人的基盤の強化」
地方自治体が個人情報の「閲覧」から「提供」に変更した問題について、『防衛白書』(2022年版)にも、具体的記述があります。募集・採用の項には「募集に関する事務の円滑な遂行のために必要な募集対象者情報の提出を含め、所要の協力が得られるよう地方公共団体などとの連携を強化している」と記されています。
昨年12月16日に政府が閣議決定した「国家安全保障戦略」では「人的基盤を強化する」とし、「防衛力整備計画」では「厳しい採用環境の中で優秀な人材を安定的に確保するため(中略)地方公共団体及び関係機関等との連携を強化する」と強調しています。
旭川平和委員会の由井久志事務局長は、「住民基本台帳のデータを駆使し、訪問までして勧誘する官公庁は他にない」と指摘。「戦争法(安保法制)を強行し、自衛隊が戦地に派遣される可能性が強まるなか、志願者は年々減少傾向にあります。自衛隊は憲法違反の危険な任務実態を改めず、イメージ先行の広報宣伝で市民との接点を増やし、過度な勧誘が不安を与えています。旭川平和委員会は市に個人情報の提供をやめるよう求めてきました。住民の福祉の増進をはかるべき自治体は、住民の側にたち、個人情報保護を厳守すべきです」と指摘します。
戦争準備阻む決意
日本共産党道議団・真下紀子団長の話 自治体による青年たちの個人情報提供は、先制攻撃のための武器を使用することも含めた「戦闘人材の確保」であり、岸田政権の「戦争準備」にほかなりません。この準備に青年たちを組み込むわけにはいきません。戦争への道に立ちはだかる固い決意で、統一地方選挙に挑み、必ず勝ち抜きます。