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2023年2月27日(月)

主張

不同意性交等罪

被害当事者らの声が動かした

 刑法の性犯罪規定の改正案が今国会に提出される予定です。法務省は「強制性交等罪」の名称を「不同意性交等罪」へ変更する方針を示しています。「不同意の性交が罪にならないのはおかしい」と被害当事者らはフラワーデモなどで声を上げ続けてきました。粘り強い運動が刑法改正の議論を大きく前に進めました。女性に対する性暴力撤廃の取り組みで、世界から後れをとってきた日本にとって重要な一歩です。

家父長制の価値観でなく

 現行刑法の強制性交等罪(かつての強姦(ごうかん)罪)は、同意のない性交というだけでは罪になりません。被害者が抵抗できないほどの暴行・脅迫を伴うか、抗拒不能(抵抗・拒絶が著しく困難)・心神喪失などの状態にあったことが要件とされています。

 名古屋地裁岡崎支部判決(2019年)は、実父による性行為に娘が不同意だったことを認定する一方、「抗拒不能ではなかった」と実父を無罪にしました。同判決は、衝撃を広げ、花を手に被害を語り、性暴力根絶を訴えるフラワーデモが広がる転機となりました。

 不同意性交でも罪にならない要件が定められた背景には、刑法がつくられた明治時代の家制度・家父長制の価値観があります。女性は結婚したら家に縛られ、個人としての権利は一切なく、家の跡継ぎを産むことが使命とされました。既婚男性にとって性交は「家の継続」のための行為とされ、妻の同意は問題にもなりませんでした。

 当時の価値観の下では、強姦は被害女性への人権侵害ではなく、家制度という国家秩序を損なう意味での罪でした。女性には「貞操」を守る義務があるとされ、必死で抵抗しなければならず、それでも防げないほどの暴行・脅迫があった場合にのみ罪とされました。

 日本社会では今も「拒絶も好意を意味する」などという間違った考えが流布し、性行為には明示的な合意の意思表示がないことを当然視する感覚が根強くあります。今回の刑法改正の議論を家父長制の価値観を乗り越える重要な契機にしなければなりません。

 レイプやDV(配偶者間暴力)、痴漢、セクシュアルハラスメントなどの性暴力が起こる土台には、女性を劣った存在と扱い、夫や男性に奉仕すべきだとの役割を押しつける、ジェンダー不平等の社会の構造があります。

 刑法改正によって、「性交には同意が必要だ」「同意のない性行為は性暴力であり、相手の尊厳を傷つける人権侵害だ」という価値観を行き渡らせ、ジェンダー平等の社会を築いていく推進力にしていくことが期待されます。

人間の尊厳を守る法へ

 不同意性交を処罰する法整備が世界で最も進んでいるスウェーデンは、「性行為は自発的なものでなければならず、積極的な同意がなければレイプと見なす」という法規定を持っています。保護対象は、「心身の統合体としての人間の尊厳」だと考えられています。日本国憲法13条が掲げる「個人の尊厳」と同じ考え方です。

 被害者を守り、人間の尊厳を保障する法律へ改定を進めることは、勇気を出して声を上げ、たたかい続けてきた多くの人たちの悲願です。刑法改正を進めてきた運動を発展させ、さらなる法整備の前進へ力を合わせましょう。


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