2023年2月24日(金)
主張
性的少数者の人権
差別なくす法整備待ったなし
同性婚を法律で認めることや、LGBTQなど性的少数者に対する差別をなくす法律を求める声が広がっています。報道各社の最新の世論調査では、法整備を支持する回答が多数を占めました。
荒井勝喜前首相秘書官の性的少数者への差別発言で批判を浴びた岸田文雄首相は「LGBT理解増進法案」の検討を指示したものの、自民党内の異論は強く、成立は不透明です。なにより国会で法整備に否定的な答弁をした首相自身の人権意識が問われています。性的少数者の差別を禁止し、人権と尊厳を保障する法律の制定に背を向け続けることは許されません。
問われる岸田首相の認識
「朝日」21日付の世論調査では、同性同士の結婚を「法律で認めるべきだ」は72%にのぼりました。「産経」同日付の調査も71%が同性婚法制化に賛成でした。
LGBT理解増進法案についても、「産経」調査では64・1%が「成立させるべきだ」と答えました。性的少数者の当事者が強く求めている「差別を禁止する法律」も「朝日」調査では51%が「つくるべきだ」と多数でした。
世論は、首相の認識にも厳しい目を向けています。首相が国会で同性婚導入に関して「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁したことに「適切ではない」との答えは57・7%ありました(「共同」13日配信)。首相はこの答弁について「否定的な意味で言ったのではない」と繰り返し、撤回に応じません。当事者団体などが、同性婚の法制化や性的少数者の差別禁止法を求めても、進めると明言することを避けています。国民世論と首相の認識との乖離(かいり)は隠しようがありません。
首相が検討を指示したLGBT理解増進法案は、2021年の国会提出については実務者レベルで与野党がほぼ合意していました。ところが自民党内からの強い反発で提出できませんでした。
同法案に「差別は許されない」という文言を書き込むことに激しく抵抗した議員が少なくなかったためです。統一協会とのつながりや、家父長制に基づく家族観に固執する右翼的潮流が同党内に根深く存在することも、背景にあると指摘されています。
党内議論では「種の保存に背く」などの暴言もありました。許し難い発言をしたうちの1人、簗(やな)和生衆院議員は昨年の内閣改造で、文部科学副大臣に就任し、差別発言は不問に付されています。
そもそも理解増進法案は差別を禁止する規定は入っておらず、当事者らは、明確に差別を禁止する法律が必要と切実な声を上げています。
首相は多様性を尊重すると言うなら、同性同士の結婚を認める婚姻の平等の法案、性的少数者への差別を禁止する法案を政府の責任で国会に提出すべきです。
世界からの遅れ克服せよ
日本以外のG7(主要7カ国)各国は性的少数者への差別を禁止する法令を定めています。同性カップルにも異性カップルと同じ権利が法律で保障されています。性的少数者の人権と尊厳を守ることは世界の流れとなっています。
日本でも同性カップルを認証するパートナーシップ制度を導入した自治体は広がり、人口の6割以上になっています。国政の立ち遅れの克服は急務です。