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2023年2月23日(木)

きょうの潮流

 その漫画を目にしたのは小学生のころでした。同じ子どもの主人公に、ときに感情を入れ込みながら、はじめて実感しました。戦争や原爆というものが、いかに恐ろしく残酷か▼中沢啓治さんが実体験をもとに描いた「はだしのゲン」です。広島に原爆が落とされたあの日、中沢さんは6歳でした。自身は奇跡的に助かったものの、姉は倒壊した自宅で即死。父親と弟は家の下敷きになったまま焼け死にました▼おびただしい死体、全身にガラスが突き刺さり皮膚がたれさがった姿、腐った臭いや焦げた臭い、めちゃくちゃに壊れた街。地獄の光景をよみがえらせた漫画は被爆の実相や戦争の悲惨さを国内外に伝える役割を長く果たしてきました▼これまで広島市も平和教育に使ってきましたが、来年度から取りやめて別の教材に差し替えるといいます。漫画の一部を引くだけでは被爆の実態に迫りにくいとの理由で。これには現地の教職員組合や被爆者団体から撤回を求める声があがっています▼半世紀前に世にでた「はだしのゲン」には、今の子どもたちに理解しづらい話や時代の制約をうけた描写もあります。そうした点を含めどんな議論をしてきたのか。うなずけるような過程がみえてきません▼10年前にも過激で残虐だとして、子どもたちに自由に読ませない動きが起きました。「はだしのゲン」を貫く反戦平和への強烈な思いと、理不尽な権力にたいする怒り。いまこそ子どもたちをはじめ、たくさんの人びとに伝えるときではないのか。


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