2023年2月21日(火)
きょうの潮流
人と人のめぐりあいは、二つの「宇宙」の出あい。一人ひとりの胸の内は、だれも手を触れることのできない大宇宙である。人の心の中の宇宙を大切にしてこそ、自分の内なる大宇宙を平和に維持できるのだ―▼松本零士さんが本紙日曜版に語っていたことがあります。「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」といった壮大なテーマの作品の中で夢や希望をはぐくみ、人の心の内面や命の尊さを描いた漫画やアニメをつくり続けました▼束縛のない自由な世界への渇望。そこには少年時代の戦争体験や戦後の貧しいくらし、漫画家としての苦悩や挫折がありました。そのすべてが創作の血肉となり、うみだしたキャラクターによって命のバトンがつながれていったといいます▼陸軍のパイロットだった父親から教えられた戦争の現実。戦場漫画シリーズや核兵器の恐ろしさを伝えてきた作品には、人類が手を携え、この地球を守ってほしいとの願いが込められています▼日曜版には「星の仲間たち」と題する漫画も寄せてくれました。ある惑星を見つけた人類。緑の宝石のように輝く自然豊かで文明も発達した星。しかし発せられた電波を解読すると、たたかいに血塗られた歴史をもつ地球人は凶暴なエイリアンだと警戒されて…▼「若者の想像力は未来をも動かす力を秘めている」。松本さんは子どもたちには無限大の可能性があると、いつもエールを送っていました。85歳の旅立ち。いまごろ夢だった宇宙から地球を眺めているかもしれません。








