2023年2月19日(日)
主張
南西地域の軍事化
「戦場にするな」の声を大きく
岸田文雄政権は昨年12月に閣議決定した安保3文書に基づき、沖縄など南西地域の軍事力強化に向けた動きを本格化しようとしています。沖縄県の玉城デニー知事は県議会での所信表明(14日)で、「二度と沖縄を戦場にしてはならない」と述べ、「南西地域」を「第一線」と記述した同文書は「熾烈(しれつ)な地上戦の記憶と相まって、県民の間に大きな不安を生じさせるもの」と批判しました。南西地域の軍事力強化に反対することは、岸田政権が進めようとしている敵基地攻撃能力の保有と大軍拡を阻止する上で重要な課題です。
日米軍事協力の強化も
南西地域では、3文書で保有を決めた敵基地攻撃能力として、長距離ミサイルの配備が狙われています。
3文書は、地上から艦船を攻撃する陸上自衛隊の「地対艦ミサイル連隊」を現在の五つから七つに増やすとしています。この七つの連隊全てが敵基地攻撃をできるように、既存のミサイル「12式地対艦誘導弾」の射程を大きく延ばした「能力向上型」を、今後10年以内に配備する計画です。
既存の「12式地対艦誘導弾」は現在、健軍駐屯地(熊本市)、瀬戸内分屯地(鹿児島県・奄美大島)、宮古島駐屯地(沖縄県)に配備されています。3月には石垣駐屯地(同)、2023度には沖縄本島の勝連分屯地(うるま市)にも配備されようとしています。勝連分屯地には新たな「地対艦ミサイル連隊」の本部もつくられます。これらの駐屯地・分屯地に「能力向上型」が配備される危険が極めて大きくなっています。
与那国駐屯地(沖縄県)には、航空機を攻撃する地対空誘導弾部隊も置かれようとしています。
3文書はまた、那覇駐屯地(那覇市)の陸自第15旅団を「師団」に格上げするとしています。所属の普通科連隊(歩兵部隊)を現在の一つから二つに増やします。
このほか、3文書に基づき▽瀬戸内分屯地と保良訓練場(沖縄県宮古島市)に弾薬庫を整備▽燃料や弾薬などを備蓄する補給拠点を沖縄訓練場(同沖縄市)に新設▽部隊の迅速展開などのため民間空港・港湾の利用を拡大―することなどが計画されています。
加えて重大なのは、1月に開かれた日米首脳会談や日米の外交・軍事担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、南西地域での軍事協力の一層の強化が打ち出されていることです。
2プラス2では、米空母艦載機の着陸訓練が狙われている馬毛島(鹿児島県西之表市)での自衛隊基地建設の推進を確認しました。米軍嘉手納弾薬庫(沖縄県)の自衛隊による使用拡大、南西地域での基地の共同使用、共同演習・訓練の増加でも一致しました。さらに米側は、対艦ミサイルを備える米海兵隊の「海兵沿岸連隊」を沖縄に創設することも明らかにしました。名護市辺野古での米海兵隊の新基地建設も強調されました。
外交による緊張緩和を
デニー知事は所信表明で「米軍基地が集中していることに加え、自衛隊の急激な基地機能強化により沖縄が攻撃目標になるリスクをさらに高める事態を生じさせてはならない」とし、政府に「平和的な外交・対話による緊張緩和と信頼醸成」を求めました。こうした立場こそ何より必要です。








