2023年2月19日(日)
きょうの潮流
世界で初めてブラウン管に映し出された映像は、“いろは”の最初の「イ」の文字。1926年、電気工学者の高柳健次郎によるものでした▼テレビジョンの歴史は戦争と隣り合わせ。高柳は1940年の東京五輪のテレビ放送を目指しますが、戦争が激化し五輪は中止に。自身も電波兵器開発に従事することとなり、テレビジョン研究が中断します▼NHKがテレビ本放送を開始したのは、戦後の1953年でした。2月1日は「テレビ放送70年」に当たります。NHKのドラマ「大河ドラマが生まれた日」(4日)は、それを記念した一作。「映画に負けない大型時代劇」作りに懸ける、関係者の熱気があふれていました▼「テレビ女優」第1号の黒柳徹子さんは折にふれて「テレビを使って平和が来ればこんなに素晴らしいことはない」と発言。ドラマ「大地の子」の脚本・演出を手がけた岡崎栄さんは「戦争をやってよかったとテレビでいえますか、絶対にいってはいけない」と語っていました▼今年を「新しい戦前」と予測したのはタモリさん。多くの人々が反応しました。敵基地攻撃能力だの、軍事費43兆円だのと、岸田政権のもとで平和を脅かす動きが急です。が、テレビは一向にその危険を報じる気配がない。沈黙は政権の意向に沿うことになります▼かつて戦争に加担した苦い経験を持つメディア。ジャーナリズムであるなら、テレビ70年の機にその真価を発揮する時です。「新しい戦前」にしてはならない。テレビにも突きつけられています。








