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2023年2月16日(木)

主張

税務相談停止命令

納税者の権利侵す法案 撤回を

 岸田文雄政権が国会に提出した所得税法等改定案の審議が始まりました。同法案には「税務相談停止命令制度」(命令制度)を創設する税理士法改定案が盛り込まれています。税理士でない者が税務相談を行った場合、財務相が相談の停止を命令できる内容です。命令を出すかどうかの質問検査権を国税庁・税務署に与えます。命令に従わなかったり、調査を拒否したりした場合は罰則があります。申告納税制度を骨抜きにする改定案を撤回させる世論を広げることが重要です。

違反者はネットで公表も

 違反者は、3年間インターネットで公表され官報でも公告されます。財務省は「SNSやインターネットで『節税コンサルタント』を名乗り、不特定多数に脱税を指南し手数料を取って行う」事例などの防止のためだと説明します。

 しかし、違反とする対象や範囲は無限定です。税務相談を行っている個人や団体が「納税義務の適正な実現に重要な影響を及ぼすおそれ」があると税務署員が判断したら調査することができるなど極めて恣意(しい)的な運用が可能です。

 誤った命令が行われた場合の救済措置も不十分です。財務省は不服申し立てや裁判ができると言いますが、誤りがあったことが認められるまでインターネット上でさらされ続けることになることはプライバシー権の侵害です。

 税務調査の際は、事前通知などの手続き規定がありますが、今回の命令制度について財務省は「事前通知は行わない」と回答しました。税理士を処分する際には行政手続法を適用し、聴聞や弁明の機会が与えられますが、その規定はありません。

 軍拡増税やインボイス制度、消費税増税に反対することや、税制について意見を述べたり異議を申し立てたりする個人や団体の活動を抑え込むために悪用される恐れもあります。憲法が保障する言論、集会・結社、表現の自由の侵害につながる大問題です。

 財務省は、停止命令の対象は「脱税や不正還付の指南を不特定多数に対して、広くあまねく行う行為」と繰り返し説明しています。それならば法律の条文で明確にすべきです。

 税理士法では税理士資格がない者が「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」を反復継続して行うことを禁じています。しかし、納税者同士が税金について学び、教え合う自主申告運動は税理士法違反にあたりません。税について誰もが相談に乗り、意見を交換するのは一般的で当然の権利です。

 イギリスには税務に関する国家資格はなく、家族、友人などに対する無償の税務代理は誰でも可能とされています。

 オーストラリアとアメリカでは民間や学生のボランティアが申告の相談に乗っています。

人権無視の徴税をやめよ

 日本の税務行政は、業者を倒産に追い込む差し押さえなど人権無視のやり方で、納税者の権利を著しく蹂躙(じゅうりん)しています。

 憲法の理念に基づき、人権を保障する「納税者権利憲章」の制定こそ必要です。経済協力開発機構(OECD)加盟の主要国のうち納税者権利憲章が制定されていないのは日本だけです。納税者の権利を保障する政治を実現することが急務です。


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