しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年2月16日(木)

「一人でも多く助ける」

トルコ 捜索・支援 労組の組合員奮闘

 地震で大きな被害を受けたトルコ南部ハタイ県アンタキヤでは、労働組合の組合員が、行方不明者の捜索や被災者支援の最前線にいます。二次災害の危険が迫り、大きな精神的重圧がかかる状況下で、「苦しむ人びとを、一人でも多く助けたい」との思いで頑張っています。(トルコ南部ハタイ県アンタキヤ=秋山豊、写真も)


写真

(写真)14日、トルコ南部アンタキヤで行われていた行方不明者の捜索

 14日、アンタキヤにある救援隊の拠点に車で向かいました。道路の両側から、崩落した高層の建物やガレキの山が迫ってきます。大きく傾いたビルのすぐ横は「倒れてこないで」と祈るような気持ちで通り抜けます。一見被害を受けていないように見える建物にも人の気配はありません。

 救出・救援活動の最前線に着くと、プロの救助隊員とともに、ボランティアが参加していました。被災者に物資や医療支援を提供するチームもあります。しかし、このチーム以外、周囲にほとんど救出隊を見かけません。すでに撤退した外国のチームもあるといいます。

 ボランティアのフセイン・カラダァさん(32)は、トルコ西部イズミルに暮らす自治体職員です。

 「人びとを支える仕事がしたくて公務員になった。あまりに厳しい状況に置かれた被災者の助けになりたくて救出隊に加わった」

 地震発生から、1週間以上が経過し、生存者の救出は非常に難しくなっています。

 拠点の近くではこの日朝も、ガレキの下から子ども2人の遺体が発見されました。余震が続き、捜索活動中に建物が崩れてもおかしくありません。

 それでもこの間、カラダァさんたちは生存者2人を救出しました。そのひとりは子どもでした。

 「ガレキを掘り進め、子どもが生きていることを確認したとき、チーム全員で心から喜んだ。うれしくて涙があふれた」

悲しみこらえ救援に

 救援活動に参加しているカラダァさんは、1967年に結成されたトルコ進歩労働組合連合(DISK)の組合員です。「本当に過酷な状況だが、DISKの存在は困難に立ち向かうエネルギーをくれる」と言います。

 地元アンタキヤの組合員が拠点を訪ね、「必要なものがあったら何でも言ってほしい」と声をかけてくれ、道具や食料を支援してくれました。

 同じく、イズミルから来て支援活動に加わっているスィラ・シャンレさんもDISKの組合員。公立病院の看護師で、アンタキヤでは被災者や仲間に必要な手当てを行っています。

「看護師として」

写真

(写真)行方不明者の捜索と被災者支援をしているシャンレさん(左)とカラダァさん=14日、トルコ南部ハタイ県アンタキヤ

写真

(写真)国民民主主義党(HDP)が開設した支援センターの前で物資の提供を待つ被災者=14日、トルコ南部ハタイ県サマンダ

 「周囲の建物はほとんど破壊され、悪臭も漂い始めている。伝染病が発生するかもしれない。危険だが、看護師として被災者に手助けできるはずだ」

 シャンレさんはアンタキヤで8歳の男の子と出会いました。その子は家族を失い、心に大きな傷を負っていました。おびえきった姿を見て、心がしめつけられたと言います。

 救えなかった命のことは頭を離れません。ある女性からは「あなたたちが昨日、来ていたら子どもは助かったかもしれない」と言われました。自分も胸が苦しくなりますが、「そんな時は、被災者を支えることだけに集中するようにしている」と話します。

 アンタキヤから車で数時間離れたアダナには、DISKのアダナ事務所があります。責任者のサイダル・チャパルさん(46)は、組合員を組織して被災地に救援隊として派遣し、支援物資も送ってきました。

 チャパルさんの家族はアンタキヤで建物の下敷きになり亡くなりました。悲しみをこらえて労組による救援体制をつくってきました。携帯電話には家族の生前の写真が残っています。

 「大災害を乗り越えるために労働者の連帯を訴えたい。被災者は家と仕事を失った。暮らしを立て直せるよう取り組んでいく」

 アンタキヤから車で30分ほどのサマンダ地区も多くの建物が崩壊していました。ここでは、親クルド政党・国民民主主義党(HDP)のメンバーらが被災者に物資を手渡していました。被災者の長い列ができています。

政党も支援活動

 HDPが設置した支援センターには、米やパスタ、食用油をつめた段ボールが積まれていました。

 首都アンカラから支援に来たジャンサさん(36)は、サマンダ出身です。「生まれ育った故郷が破壊され、親せきが亡くなったことは本当にショックだ。でも家族が無事で安心した」と言うと、涙をこぼしました。

 「寒い思いをし、おなかをすかせた故郷の人びとを支えないといけない」

 一緒に支援活動をしていた国会議員のトゥライ・ハティモオウレレさん(46)はサマンダ在住で、地震で身内を亡くしました。

 「国際社会に被災者への大きな支援を訴えたい。避難所が不足し、寒さのために亡くなる人も出始めている。政府には外国からの財政援助を、被災者のために直ちに使うよう求めていく」と語りました。


pageup