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2023年2月15日(水)

主張

研究者雇い止め

今こそ無期転換促す抜本策を

 国公私立大学、研究開発法人などに雇用されている約6千人の任期付きの研究者が3月末に労働契約の更新を拒否され、雇い止めとなる危険に直面していることが、文部科学省の調査結果(7日公表)で分かりました。ほとんどは、有期労働契約が更新されて通算10年(一般労働者は5年)を超えた時に無期雇用に転換する「無期転換ルール」の適用を避けるための雇い止めとみられています。所管の文科省は脱法行為を許さない断固たる対策を打つべきです。

許されない脱法行為

 雇い止めの危機にある研究者らはいずれも10年以上にわたって大学教育や研究に従事してきた実績のある人たちです。その能力と経験を生かす場を失うことは、日本の研究力に取り返しのつかない打撃となります。既に外資系民間企業に移った研究者もいます。日本社会にとっても大きな損失です。

 理化学研究所では、雇い止めにより42の研究チームが解散に追い込まれます。雇い止め対象者のうち68人には、日本医療研究開発機構や日本学術振興会などから2023年度の競争的資金として105件8億2250万円が交付される予定です。光で乳がんを発見するなど世界最先端の研究プロジェクトが中断に追い込まれ、競争的資金が無駄になります。

 岸田文雄政権は「科学技術立国」を掲げて、減少している博士課程進学者を増やすために大学院生への経済的支援を強化しようとしています。しかし、多額の競争的資金を得られる優秀な研究者であっても10年しか働けず、「使い捨て」になるということになれば、研究者をめざす若者はますますいなくなります。

 研究者の大量の雇い止めは、無期転換ルールを定めた10年前から憂慮されていました。昨年3月、日本共産党の田村智子参院議員が国会で改めて問題にし、対策を求めました。にもかかわらず、解決していないのは、文科省の対応が後手で、対策に弱点があるからです。無期転換ルールを徹底する通知を大学と研究開発法人に出したのは、田村氏の国会での追及から半年以上もたった昨年11月です。しかも380人もの雇い止めを強行しようとする理研の方針を肯定的に例示する矛盾した中身です。

 労働組合が撤回を求めても、理研は文科省が認めているからと開き直り、雇い止めを強行する姿勢を崩していません。無期転換ルールを徹底しても、無期転換逃れの雇い止めを容認したのでは、事態を変えることはできません。

 文科省は、調査結果の公表とともに無期転換ルールを徹底する通知を改めて出しました。雇い止めの期日である3月末は目前に迫っています。文科省は今度こそ理研に対する厳正な指導を直ちに行わなければなりません。

雇用安定へ財政支援せよ

 大学が無期転換を避けようとするのは、運営費交付金などの基盤的経費がこれまで削減され、財政基盤が今後も不安定になると見込んでいるからです。大学や研究機関の姿勢をすぐに変えさせるためには、無期転換を促すための財政支援を行うしかありません。

 研究力低下と言われる事態の原因は、研究者の雇用の不安定化にあります。今こそ、無期雇用への転換を促し、雇用の安定化にかじを切る時です。


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