2023年2月10日(金)
米中に対話解決促す
気球撃墜 東南アジア発言相次ぐ
【ハノイ=面川誠】偵察用とみられる中国の気球が米国で撃墜され米中対立の激化に拍車をかけていることに、東南アジア各国が懸念を強めています。背景には南シナ海や台湾海峡での米中対立があります。シンガポールのバラクリシュナン外相が米中の「開かれた意思疎通」を求めるなど、対話による解決を促す声が相次いでいます。
バラクリシュナン氏は4日、東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議が開かれたジャカルタで記者会見し、ブリンケン米国務長官の訪中が延期されたことは「非常に残念だ」と述べ、「東南アジアの視点から言えば、米中が関与し合い、会合を開き、より開かれた意思疎通を行えば行うほど、より良い結果が得られ、誤解が減る」と強調しました。
同氏は昨年12月に南シナ海上空で米国の偵察機と中国の戦闘機が6メートルにまで異常接近した事件に言及。ASEANは米中間の緊張関係に「細心の注意を払っている」として、「双方が十分に自制し、そうした事件が起こる可能性を減らすよう望む」と述べました。
マレーシアのマラヤ大学中国研究所のニョー・チョービン所長は現地紙に、米中緊張が続くことは東南アジアの利益にならないと指摘。昨年11月の20カ国・地域(G20)首脳会議を機に、インドネシアのバリでバイデン米大統領と習近平中国国家主席が会談した「重要なステップ」を発展させるべきだと主張しました。
ニョー氏は米中ともに国内世論を意識して「今のところは妥協を望んでいない可能性がある」として、対話再開が遠のくことを懸念しています。
カンボジアの政府系シンクタンク「アジア・ビジョン研究所」のチアン・バンナリット代表も、米中両国が世論向けに強硬姿勢を取るのではなく、国際法を順守すべきだと強調。「政治家が両国関係を世論に任せれば、緊張は制御不能に激化していく」と警告しました。
シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは9日、「今回の事件は米国と中国の危機管理能力に改善の余地があることを示している」と指摘。米中両国がさまざまな多国間の首脳会議の場を活用することによって、「両首脳が正しいシグナルを送ることができる」と積極的に対話に臨むよう呼び掛けました。








