2023年2月8日(水)
英 医療スト11万人超
賃上げ・増員求める
75年で最大規模
インフレ10%「生きていけない」
【パリ=桑野白馬】英国で6日、物価高騰に見合う賃上げを求めて国民保健サービス(NHS)の医療従事者らが一斉にストライキを実施しました。英メディアによると看護師約10万人、救急隊員1万2000人が参加し、NHSの75年の歴史の中で最大規模となりました。
看護師や救急隊員らは昨年末から、10%以上に達したインフレに対応する賃上げを求め、別々にストを行ってきました。この日は一緒に街頭に繰り出し「この給料では生きていけない」「政府は賃上げを」と訴えました。
看護師労組の王立看護協会(RCN)によると、医療従事者の実質賃金は過去10年にわたり下落してきました。この影響で、昨年だけで2万5000人が離職し、患者の対応に深刻な影響が出ています。
ロンドン中心部のセント・トーマス病院前では「拍手では生活費を支払えない」「職員の増員と十分な配置が人命を救う」と書いたプラカードを持った職員がピケラインを設置しました。
欧州各メディアには「人手不足で365日、足を棒のようにして働いている」、「もうやっていけない。辞職を考えている」といった看護師の切実な声があふれました。
シャップス民間企業相はストを受け、「心臓発作や脳卒中になった場合、(治療できるのは)くじにあたるようなもの」と患者の不安をあおりました。しかし、各労組によると、救急車の緊急呼びだしや救急外来、がん治療の対応はスト中も継続されました。
民間最大労組ユナイトのシャロン・グレアム書記長はシャップス氏の発言を「不誠実なウソ」と批判。賃上げ交渉に応じない政府の態度が問題だと指摘し「腕まくりをして、テーブルについて交渉することこそが必要だ」と強調しました。