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2023年2月8日(水)

きょうの潮流

 突然の腰の痛みで入院したのは9歳のとき。スポーツが大好きな少年を襲った脊髄腫瘍。歩けないと宣告され、「本当にショックだった」。7日、引退会見を開いた車いすテニスの国枝慎吾選手(38)が回想していたことがあります▼車いすで恐る恐る学校へ向かった最初の日。友達の一言に救われます。「しんご、バスケやろうぜ」。当時、アニメ「スラムダンク」が大はやり。知らぬ間にみなバスケットボールのとりこになっていました。見えない垣根を砕いた何気ない言葉。「あの一言があって、いまのぼくがある」と▼いつも友達はバスケで手加減なくぶつかってきました。何度も転倒しつつ、負けまいと練習した車いす操作。これが後の巧みなチェアワークにもつながりました▼「やりきった現役生活を送れたことは最高の幸せ」。引退会見での表情は晴れやかでした。パラリンピックで単複4個の金メダルを獲得、四大大会で50勝を挙げ、「生涯ゴールデンスラム」も手に。プロとして車いすテニスと障害者スポーツの価値を高める礎を築きました▼研究熱心でストイック。ひじのけがを克服するなど努力を重ねた28年のテニス人生。会見ではコート上と異なる優しいまなざしにあふれていました▼いじめをなくすプロジェクトで、自身の経験から「何気ない一言」の大切さを伝えていました。困っている子、元気のない子に「一言かけてみて」。深い悲しみを知るからこその優しさ。強いだけでないチャンピオンがラケットを置きました。


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