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2023年2月7日(火)

敵基地攻撃能力の危険 志位委員長質問が明らかにしたもの(中)

「脅威でない」首相説明不能

 「平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」。安保3文書の最上位文書である「国家安全保障戦略」はこう述べ、敵基地攻撃能力(反撃能力)についても「専守防衛の考え方を変更するものではない」としています。本当にそうなのでしょうか。

3000キロ射程や極超音速兵器

 日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、政府が狙う軍事費の2倍化=「国内総生産(GDP)比2%」を達成すれば、世界第3位の軍事大国になると指摘しました。

 さらに、政府が米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークや12式地対艦誘導弾の長射程化などといった大量の長射程ミサイルと、それらを発射する戦闘機、イージス艦、潜水艦の大増強を狙っていることをあげ、射程は最大で3000キロにまで達すると指摘。「『他国に脅威を与える』ことはないと、どうして言えるのか」と追及したのに対し、岸田文雄首相はまともに答弁できませんでした。

 志位氏は、敵基地攻撃兵器のなかでも重要な位置づけを与えられている「極超音速兵器」を取り上げました。同兵器は(1)低高度をスクラムジェットエンジンで飛行する「極超音速誘導弾」(2)高高度を上下動しながら滑空する「極超音速滑空弾」―の2種類あり、日本では防衛装備庁が開発を進めています。

 極超音速兵器は音速の5~20倍で飛行し、軌道も自在に変えられます。現在のミサイル防衛網では迎撃不可能とされ、まさに「脅威」そのものです。

 志位氏は、海上自衛隊幹部学校がホームページに掲載したコラムで、中国やロシアによる極超音速兵器の開発は、日本にとって「脅威」だと述べていることを紹介。さらに、国家安保戦略も、日本の周辺国が極超音速兵器を保有していることに言及し、「質量ともに(周辺国の)ミサイル戦力が著しく増強」「わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威に」なっているとして、極超音速兵器を含む「反撃能力」保有を正当化しています。

歓迎するのは同盟国ばかり

 「中ロが持つことが『脅威』で、日本が保有することが『脅威』にならないとどうしていえるのか」。志位氏の追及は、まさに急所を突いたものでした。これに対する首相の答弁は、驚くべきものでした。

 「わが国の防衛力強化について、いくつかの国は否定的コメントを発表しているが、私が訪問した欧州、北米やG7(主要7カ国)各国は歓迎している」

 首相がここであげたのは米国を中心とした軍事ブロックです。その中で「歓迎」されれば、中国や北朝鮮が反発して緊張が高まろうとかまわないという、驚くべき論理です。

 結局、首相は敵基地攻撃能力の保有が他国への「脅威」にならないという理由をまともに説明できなかったといえます。

抑止の本質 昔も今も恐怖

 一方、首相は「抑止力・対処力を強化することは、わが国に対して不当な武力攻撃をする国々の行動を抑止・対処する上で重要だ」と述べ、敵基地攻撃能力の保有を「抑止力・対処力」であるとして正当化しました。

 抑止力とは何か。志位氏は、防衛大学校が公開している論文『日本の防衛政策と抑止』を紹介し、「抑止の要件の一つは敵対国に対する威嚇」「抑止の本質は、昔も今も恐怖である」としていることを引用。この論文はさらに、「抑止」は「日本の専守防衛の考え方と相容(い)れない面がある」と述べています。

 この考えに沿えば、首相が敵基地攻撃能力の保有で「抑止力・対処力」を強めると言いながら、「専守防衛に徹する」と述べることは、成り立たないことになります。

 志位氏は「相手国に脅威を与える敵基地攻撃能力保有で『抑止力』を強めながら、『他国に脅威を与えるような軍事大国にならない』というのは、根本的に矛盾している」「専守防衛に徹し」とうたっている安保3文書の実態は「『専守防衛』を完全に投げ捨てるものであることは明らかだ」と迫りました。

 (つづく)


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