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2023年2月6日(月)

敵基地攻撃能力の危険 志位委員長質問が明らかにしたもの(上)

先制攻撃前提の米と融合

 「専守防衛」から米国とともに先制攻撃へ―。日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、戦後の安全保障政策の大転換をもたらす「安保3文書」の核心=「敵基地攻撃能力」保有の根本問題をただしました。そのポイントを振り返ります。


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(写真)IAMDについて質問する志位和夫委員長=1月31日、衆院予算委

 最大の問題は、岸田政権が保有を宣言した敵基地攻撃能力(反撃能力)が、憲法違反であるだけではなく、日米が「融合」する形で運用され、米軍の先制攻撃への参加の危険があることです。

 志位氏は、1月13日の日米共同声明や同11日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)共同発表で、日本の「反撃能力の効果的な運用」のため、日米間の協力を深化・強化することを明記していると指摘。さらに、2プラス2共同発表は「日米同盟の抑止力・対処力」の強化の冒頭に、「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)をあげているとして、その危険性を告発しました。

インフラまで攻撃対象広く

 IAMDは米軍が地球規模で空域を支配するため、「ミサイル防衛」などの防御と、相手国のミサイル基地攻撃などを一体的に駆使する「攻守一体」のシステムです。米インド太平洋軍は2014年、ハワイの司令部に「太平洋IAMDセンター」を設置するなど具体化を加速。念頭にあるのは中国との覇権争いです。

 政府は今回の安保3文書で、IAMD導入を初めて表明しました。日本のIAMDも「防空」「ミサイル防衛」と一体で、敵基地攻撃能力の保有・行使を明記しており、米軍と同じ構造です。

 米軍のIAMDの最大の問題は、国際法違反の先制攻撃が前提になっていることです。志位氏は、IAMDの基本原則を示した米統合参謀本部のドクトリン(教義)「対航空・ミサイル脅威」(17年4月)を明らかにしました。この文書には「攻撃」部分(攻勢対航空)に関して二つの原則が示されています。

 第一は、「ミサイルサイト、飛行場、指揮統制機能、インフラストラクチャー」を攻撃対象としていることです。軍事拠点にとどまらず、「指揮統制機能」=政府機関や省庁、「インフラ」=鉄道や道路、港湾、空港などをあげています。

 第二は、「敵の飛行機やミサイルを離陸・発射の前と後の双方において破壊、または無力化する」「先制的にも対処的にもなる」などとし、先制攻撃を明示していることです。これが米軍の基本原則なのです。

米軍の原則を首相も「承知」

 「米軍がこうした原則を持っていることをご存じか」。志位氏の追及に岸田文雄首相は「承知している」と述べ、先制攻撃を含んでいることを認めました。

 重大なのは、米軍は先制攻撃を前提としたIAMDを強化するために、同盟国の参加を求めていることです。

統合防空ミサイル防衛(IAMD) 切れ目なく

 IAMDへの同盟国の参加について、米統合参謀本部ドクトリン(教義)は「最大限の戦闘能力を発揮するため、米軍と同盟国の能力を統合」する方針を明記。北大西洋条約機構(NATO)軍では、既に統合司令部の下でIAMDを運用する態勢が確立しています。

 首相は「米国のIAMDに統合される、参加することはない。日本は独自に行う」と明確に否定しました。しかし、首相自身が、1月13日のバイデン米大統領との会談で、日本の敵基地攻撃能力(反撃能力)に関して米国との協力の強化を明記している以上、「独自に行う」ことはありえません。

一緒に訓練し、一緒に作戦へ

 首相の答弁に対して、志位氏は、米空軍が発行している機関誌『航空宇宙作戦レビュー』の2022年夏号に掲載された、米インド太平洋軍の「IAMD構想2028」を明らかにして反論。そこでは、こう述べられています。

 ▽インド太平洋軍の広大な管轄で「統合防空ミサイル防衛能力」を高めることは、米国単独では不可能であり、同盟国や友好国が絶対に重要である。

 ▽同盟国との協力のあり方は「サイド・バイ・サイド―隣に並んでの統合」でなく、「シームレス―切れ目のない融合」が必要だ。

 志位氏は、その意味を、次のように解明しました。

 ▽従来の米国と同盟国との協力は「サイド・バイ・サイドの統合」だった。第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦では、それぞれの同盟国が、それぞれに上陸する海岸を担当した。イラク戦争、アフガニスタン戦争の際にも、多国籍軍は各国の責任地域に分かれてたたかった。

 ▽しかし、IAMDでは、すべてのプレーヤー・コーチが、同じプレーブックを持ち、一緒に訓練し、一緒に作戦を実行し、敵からは米軍と同盟国が一つのチームとして見られる。

 志位氏は「これが米軍の方針だ。自衛隊だけは、独立した指揮系統に従って行動することはあり得ない」と述べ、こう迫りました。

 「アメリカが、この方針に基づいて先制攻撃の戦争に乗り出した時に、自衛隊も一緒に戦争することになる。つまり、憲法違反であるだけでなく、国連憲章と国際法に違反する無法な戦争に乗り出すことになる」

能力の保有が参加する資格

 首相はそれでも、参加を否定し続けます。志位氏は質疑終了後の記者会見で重ねて指摘しました。

 「米軍は『シームレスな融合』が必要だと言っている。『ミサイル防衛』と敵基地攻撃を一体にやるのだから、瞬時の軍事的な対応が必要だ。おのおのバラバラにやっていたら、軍事作戦として成り立たない」

 実は、政府は18年の「防衛計画の大綱」改定時、既にIAMD導入を検討していました。しかし、当時は敵基地攻撃能力の保有まで踏み込めなかったため、断念しています。今回、岸田政権が安保3文書を強行したことで、“晴れて”導入を表明したのです。

 志位氏は記者会見で、こう述べました。

 「米軍のIAMDに参加しようと思うと、これまでの自衛隊では参加できない。敵基地攻撃能力を持つことが『エントリー=参加資格』となっている。敵基地攻撃能力を持って参加し、『融合』する形で軍事活動をやっていく。ここに核心がある」 (つづく)

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