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2023年1月30日(月)

きょうの潮流

 その選挙を取材した地元紙の記者は当時こんなことを報告していました。「町民の意識の奥底には、停滞感、出口の見えないいらだちのような感情が強く流れていたのではないか」▼四半世紀前、山深い長野・木曽の町で行われた首長選。大方の予測を覆して選ばれたのは日本共産党の町議だった田中勝己さんでした。以来、合併前と合わせ4期16年。揺るぎなく掲げたのが「町民が主人公のまちづくり」でした▼地方を顧みない自民党政治のもとで過疎や高齢化が進むなか、住民自治と住民参加を徹底。ゆたかな自然や歴史、文化を生かしたまちおこしや独自の産業を育てました。その足跡は多くの地方自治体の手本にもなりました▼2013年の引退後はしばらく晴耕雨読の日々を過ごしていたという田中さん。85歳となった昨年、『神秘の音色』(文藝出版)と題した短編小説集を上梓しました。若い頃に情熱を傾けた文学を思い出し、つづってきた作品をまとめたといいます▼出馬をめぐる葛藤やオウム真理教とのたたかい、表題にもなった世界的なバイオリン製作者とのつながり…。小説とはいえ、そこには自身の体験や歩みがふんだんに織りこまれ、実践してきた町政の底流にある田中さんの熱い思いが伝わってきます▼地方きりすての政治が続くなか、いまも列島を覆う「停滞感」や「出口の見えないいらだち」。それを払しょくし、まちを変える力はどこにあるのか。歴史が示す道は「住民こそ主人公」を貫いた先にみえるはずです。


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