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2023年1月28日(土)

小池書記局長の代表質問 参院本会議

 日本共産党の小池晃書記局長が27日の参院本会議で行った、岸田文雄首相の施政方針演説に対する代表質問は次の通りです。

総理が立ち向かうべきは、自民党と統一協会の癒着の徹底解明と「政治とカネ」問題の究明

写真

(写真)代表質問を行う小池晃書記局長=27日、参院本会議

 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。

 年頭所感で総理は、「積み残してきた多くの問題、『先送りできない問題』に、正面から立ち向かい、一つ一つ答えを出す」と述べました。

 「積み残してきた問題」というなら、自民党と統一協会との癒着を徹底的に解明し、統一協会に対する解散命令をすみやかに請求すべきではありませんか。

 「先送りできない問題」に立ち向かうというなら、自民党議員に相次ぐ政治とカネの問題の責任を認め、メスを入れるべきではありませんか。

 ところが総理はこうした課題には、まともに向き合おうとせず、くらしも平和も憲法も踏みにじる大暴走を始めています。

「専守防衛」を投げ捨てた敵基地攻撃能力の保有――安保法制により憲法9条下で絶対許されない海外での武力行使が可能に

 政府が年末に閣議決定した、安全保障3文書は、歴代政府が「建前」としてきた専守防衛さえ投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有に公然とふみきるものです。

米軍指揮下で自衛隊が先制攻撃――報復攻撃で日本は焼け野原に

 重大なことは、これが集団的自衛権の行使を可能にした安保法制のもとで具体化されようとしていることです。3文書は、敵基地攻撃能力を「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」だけでなく、「存立危機事態」、すなわち集団的自衛権の行使として使用できるとしています。ならば、「自分の国は自分で守る」という政府の言い訳はまったく成り立たないのではありませんか。

 日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカとともに他国領土にミサイルを撃ち込むことが、どうして「反撃」能力なのですか。相手国からすれば、事実上の先制攻撃であり、憲法9条の下で絶対に許されない海外での武力行使そのものではありませんか。

 先日の日米共同声明は、「日本の反撃能力」の「開発」と「効果的な運用」について「協力を強化する」方針を確認しました。日米2プラス2では、自衛隊が統合司令部を設置して、日米の司令部機能をさらに一体化することも確認しています。

 アメリカが同盟国と推進する、攻撃と防御が一体となった「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」のもとで日本の長射程ミサイルが使用されれば、米軍の指揮統制のもとで、自衛隊が米軍の相手国に先制攻撃することになります。

 その結果、報復攻撃で日本は焼け野原になってしまうのではありませんか。

沖縄が再び戦場になることを想定した日米一体の戦争態勢づくり

 総理は施政方針演説で、「南西地域の防衛体制の抜本強化」を進めると述べました。「沖縄に寄り添う」との言葉も、消えてなくなってしまいました。

 凄惨(せいさん)な地上戦を体験した沖縄で、陸上自衛隊の増強、長射程ミサイルの配備、そのための嘉手納弾薬庫の共同使用や新たな補給拠点の設置、民間空港・港湾の軍事利用の拡大などが計画されています。宮古、石垣、与那国島ではミサイル基地建設が進んでいます。米軍も海兵隊を改編し、無人の地対艦ミサイルを配備しようとしています。

 これらはまさに沖縄が再び戦場になることを想定した、日米一体の戦争態勢づくりではありませんか。本土決戦を遅らせるための「捨て石」にした沖縄戦の過ちを繰り返すのですか。敵基地攻撃兵器の配備に反対している玉城デニー沖縄県知事や、石垣市議会の声に、総理はどうこたえるのですか。

各地で進む自衛隊司令部の地下化は攻撃対象になるとの想定か

 危険が襲うのは沖縄だけではありません。来年度予算には、那覇駐屯地などとともに、熊本市内の健軍駐屯地や福岡の築城、宮崎の新田原基地などの司令部の地下化が盛りこまれています。今後すべての自衛隊司令部の地下化を進めるのですか。市街地の中心部にある自衛隊基地も攻撃対象になると想定しているからですか。明確な答弁を求めます。

軍事予算が文教予算の2倍の国が「平和国家」か

 5年間で43兆円もの大軍拡を進めることにも、大きな批判が寄せられています。来年度予算では、社会保障の自然増が1500億円も抑制され、中小企業対策費も農業予算もマイナスです。5年後には軍事費が文教予算の2倍以上となります。

 軍事費が文教予算の2倍という国が、「平和国家」だと言えるんでしょうか。そのための大増税など、言語道断ではありませんか。お答えください。

東アジアを平和の地域にするため力を尽くすべきだ

 昨年、総理も参加した東アジアサミットの「議長声明」は、「すべての関係当事国の平和的な対話の継続と平和的対話に資する空気の増進で問題を解決していく」としています。敵基地攻撃と大軍拡は「平和的対話に資する空気の増進」に反するのではありませんか。

 東南アジア諸国連合=ASEANは、東アジアのすべての国を包み込む平和の枠組みを強化し、東アジア規模での友好協力条約の締結を提唱しています。先日の日米首脳会談も、「『ASEANインド太平洋構想』を支持していく」としました。

 これこそ前進させるべき平和への道ではありませんか。憲法9条を持つ日本こそ、ASEANと力を合わせ、東アジアサミットに集まった米中を含むすべての関係諸国を包摂した、平和の枠組みづくりに力を尽くすべきです。答弁を求めます。

大企業も中小企業も賃上げを可能にする内部留保を活用した日本共産党の提案の実行を

 実質賃金は8カ月連続マイナスとなりました。総理は「持続的に賃金が上がる『構造』を作り上げる」としながら、その方法は「財界にお願いする」ことなのですか。財界にお願いするだけで、働く人の7割がいる中小企業がどうして賃上げできるのですか。

 わが党の提案は、500兆円を超えた大企業の内部留保から、賃上げや設備投資分を控除したうえで時限的に課税し、大企業の労働者の賃上げを促すとともに、5年間で10兆円生まれる財源を中小企業の賃上げ支援に充て、最低賃金を全国どこでも時給1500円に引き上げ、大企業も中小企業も賃上げを可能にするものです。

拒否理由の「二重課税」は財務省が否定

 総理は「二重課税だ」と拒否しますが、財務省は国会で「二重課税の定義はない。関係する経済団体からの指摘だ」と答弁しました。「二重課税」などという言い訳は、金輪際やめるべきではありませんか。

 総理、内部留保がどんどん積み上がるような社会を、このままにしていていいのですか。

 「成長の果実を賃上げに」というなら、言葉通りに実行すべきではありませんか。

 そもそも、所得再分配の主体は、民間企業ではなく政府です。税制と社会保障制度によって所得配分のゆがみを正すのが政府の責任ではありませんか。お答えください。

物価上昇を超えた年金引き上げこそ

 来年度の公的年金は実質0・6%の目減りで、そのうち0・3%は、過去2年間の「削り残し」分です。物価高騰のただなかに、積み残しを含めた削減率を機械的に適用する、こんなことでは年金不信はさらに高まり、持続不可能な制度になってしまいます。

 民間企業に対して「足元で物価上昇を超える賃上げが必要」というなら、政府も年金を物価上昇を超えて引き上げるべきではありませんか。答弁を求めます。

深刻な物価上昇から家計を守る最も有効な方法は消費税の減税

 12月の消費者物価指数は、41年ぶりに前年同月比で4・0%の上昇でした。この深刻な物価高に対して、施政方針演説で総理が示した方針は「2次補正予算の早期執行」だけです。しかし、物価高騰は政府が支援対象とする電気代やガス代だけにとどまらず、広範な品目に及び、1世帯あたり14万円もの負担増です。

 深刻な物価上昇から家計を守る最も有効な方法は、消費税の減税です。コロナ禍で世界100カ国と地域が実施した付加価値税・消費税の減税にふみきるべきではありませんか。

インボイス導入はきっぱり中止を

 10月に迫ったインボイス導入は、小規模な事業者やフリーランスなど数百万人もの人々に多大な負担をもたらします。「インボイスが導入されたら廃業せざるを得ない」という悲鳴があがり、地方議会で採択された意見書は、昨年末で389自治体に広がっています。導入はきっぱり中止すべきではありませんか。

 総理は、所得が1億円を超えると所得税の負担率が逆に下がってしまう「1億円の壁」の是正を掲げていたのに、今回提案されているのは、所得30億円以上の超富裕層だけで、申告納税者では200人余り、税率の引き上げもわずかです。「1億円の壁を崩す」どころか、「30億円の壁に小さな穴を開ける」程度で不公平が是正されるとお考えか。なぜ、金融所得への低い税率には手を付けなかったのか。住民税と合わせて20%の税率を、少なくとも高額所得者には欧米並みの30%以上を適用すべきではありませんか。答弁を求めます。

日本から酪農の灯が消えかねない深刻な危機の打開を求める

 危機に直面する酪農について質問します。

 酪農家はいま、肥料も飼料も2年前より5割アップする一方、乳価はそれに見合わず、「牛乳を搾れば搾るほど赤字が増える」という状況です。

 総理には、日本から酪農の灯が消えかねない、深刻な危機だという認識はありますか。

酪農家が生き残れる抜本的支援策を緊急に

 政府は一連の対策をとったといいますが、未曽有の危機に対応するものにはなっていません。「政府は、酪農家を見殺しにするのか!」という叫びは、その表れです。

 従来の対策の延長でなく、酪農家が生き残れる抜本的な支援策を緊急に打ち出すべきです。飼料、肥料、燃油などの、価格高騰前との差額を政府の責任で補てんすべきではありませんか。答弁を求めます。

 これまで牛を増やせと言ってきた政府が、生乳が過剰だとして、牛を減らしたら補助金を出すといいます。他方で乳製品の輸入には一切手をつけない。これで農家の納得が得られると思いますか。牛は生きています。生きている限り搾乳を続けなければなりません。搾った生乳を泣く泣く捨てたり、牛を処分せざるを得ない酪農家の苦悩が、総理、わかりますか。

 補助金は牛を殺すためでなく、生かすためにこそ出すべきです。お答えください。

「次元の異なる子育て支援」なら教育費負担の軽減を、安心・安全の保育体制確保は待ったなし

 従来とは次元の異なる子育て支援を行うというなら、教育費負担の軽減こそ求められます。ならば高すぎる学費を半減させ、入学しないのに取られる入学金制度を廃止し、給付制奨学金制度を大幅に拡充し、小中学校の給食費は憲法通りに国の責任で無償化すべきです。答弁を求めます。

 安心・安全な保育体制の確保も待ったなしです。

 この間、バス置き去りなど悲惨な事件も起きていますが、背景には諸外国と比べても大きく立ちおくれている保育士の配置基準があります。スウェーデンでは4~5歳児の子ども18人に保育士3人という基準ですが、わが国では、4~5歳児に対する保育士の配置基準は子ども30人に対し保育士1人で、1948年の児童福祉法制定時から70年以上変わっていません。多くの保育所は独自に保育士を配置するなど努力していますが、求められているのは国基準の見直しです。

 子どもたちの命をまもる保育士の配置基準を見直し、処遇改善を進めるべきではありませんか。お答えください。

日本社会を「少子化社会」にした根源にジェンダー差別――ジェンダー平等社会につくりかえるべきだ

 日本を「少子化社会」にした根源の一つがジェンダー差別です。しかし、総理の「少子化対策」には、ジェンダー平等を推進するための、社会システムの改革・転換という視点がまったくありません。

 明治憲法下での家父長制、男尊女卑の家族制度を「美しい国」と美化する自民党政治のもとで、女性たちの声が反映されない政治と慣習が引き継がれてきました。「少子化の原因は晩婚化」と女性にばかり責任を押しつけ、子育ては社会が担うのではなく、家族が担うものだと、児童手当に所得制限を復活させ、家事・育児・介護などはもっぱら女性に担わせる一方で、低賃金と不安定な雇用によって、男女の生涯賃金格差は1億円。こうした政治が、子どもを産み育てることを困難にしてきたという認識が、総理にはありますか。

 選択的夫婦別姓の実現や同性婚の法制化をはじめ、日本社会をジェンダー平等社会につくりかえるべきではありませんか。答弁を求めます。

原発の再稼働と新増設方針の撤回を求める――福島事故の被害やふるさとを追われ生業を奪われた人々の苦しみが見えないか

 先日、自民党の麻生太郎副総裁が、原発の死亡事故はゼロだと発言しましたが、まったく事実に反します。関西電力美浜原発などで死亡事故は起きています。東京電力福島第1原発の事故では、関連死が2000名を超えています。

 総理も、麻生氏のように原発事故による被害は「たいしたことがない」という認識なのですか。原発の再稼働だけでなく、新たな原発まで建設し、60年を超える老朽原発まで動かそうと、原発回帰への大転換を打ち出したのは、そのような認識だからでしょうか。そうでなければ、いまだに多数の方が避難を続け、ふるさとを奪われ、生業(なりわい)も奪われた福島の人々の苦しみに対して、こんな方針転換など、できるわけがないではありませんか。

 原発回帰は再生可能エネルギーも後景に追いやり、気候危機対策にも、エネルギーの海外依存からの脱却にも逆行します。いったい、どこがグリーンか。

 総理は「日本には再エネ適地が少ない」といいますが、世界有数の地震・津波国で、実際に地震・津波で世界最悪の原発事故を起こした日本ほど、原発に適さない国はありません。

 原発の再稼働と新増設方針を撤回し、原発ゼロと、石炭火力からの撤退を決断し、純国産の再生可能エネルギー大量普及でエネルギー自給率の向上をはかるべきです。答弁を求めます。

 原発回帰の方針は、昨年参院選での自民党の、「原発の新規建設は考えていない」という公約に完全に反します。政府と与党で検討したから問題ないというのは、議会制民主主義を無視した暴論です。

 総理が「日本の安全保障政策の大転換」とする安保3文書も、国会では答弁を避け続け、閉会後に閣議決定し、まっさきに米国に報告しました。

 これが民主主義国家のやることですか。これでまともな主権国家といえるのですか。

学術会議の独立性を侵害・変質を強行する「改革」方針の撤回を

 内閣府が12月に公表した日本学術会議の「改革」方針について、学術会議は、「独立性が侵害されるおそれがある」として強く再考を求める声明を発表し、多くの学会が賛同する声明をあげています。総理は「透明性の確保」のためと言いますが、ならばまず政府がやるべきことは、会員6名の任命拒否の経過と理由を明らかにすることではありませんか。あのような暴挙に無反省のまま問題をすり替え、学術会議の変質を強行する方針は撤回すべきではありませんか。答弁を求めます。

 日本共産党は、広範な市民と力あわせ、この国の民主主義、立憲主義を取り戻し、くらしと平和を守りぬく決意です。そのことを表明して、質問を終わります。


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