2023年1月26日(木)
控訴審も労災認めず
東京高裁 ダブルワークの高齢者
少ない年金を補うため、ダブルワークで働く76歳の男性が、仕事中のケガを労災と認めなかった国の処分取り消しを求めた訴訟で、東京高裁(志田原信三裁判長)は25日、一審に続き男性の請求を棄却しました。
男性は東京都八王子市内の給食会社のパート職員だった2017年に、重さ10キロのご飯の内釜を何度も運ぶ中で、左肩の腱板(けんばん)断裂を負いました。
男性は当初、自身に労災が適用されることを知りませんでした。約5カ月後に手術を担当した医師から「このケガは労災だ」と指摘され、会社に労災の手続きを依頼しました。
ところが会社は、「(男性は)ダブルワークをしており、別の仕事でのケガではないか」などと書いた書類を八王子労働基準監督署へ提出。同署は男性の労災を認めませんでした。
一審では、ケガの2日後に「肩を痛めた」と男性から聞いた同僚が証言しましたが、「容易に信じられない」などとして棄却しました。
この日の控訴審で、判決は「(同僚に)肩の痛みについて相談したことを認めるには至らない」として男性の訴えを退けました。
判決後、男性は「いずれ痛みが治まるのではないかと、我慢して働き、時間が経過していた。それなのに『すぐにケガを伝えなかった方が悪い』と言われたようで心外だ。職を失うのが怖かったし、会社は労災の周知を怠り、教えてくれなかった」と語りました。