しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年1月25日(水)

核禁条約 核抑止力からの出口示す

第1回締約国会議議長 クメント氏強調

 【ワシントン=島田峰隆】オーストリア外務省のアレクサンダー・クメント軍縮局長は23日、発効から2周年を迎えた核兵器禁止条約について、核軍縮が進まない中で「希望の光」になっていると強調しました。クメント氏は、昨年6月にウィーンで開かれた核兵器禁止条約第1回締約国会議で議長を務めました。米誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』(電子版)に寄稿した論文で述べました。


写真

(写真)アレクサンダー・クメント氏=2022年6月、ウィーン(島田峰隆撮影)

 クメント氏は、ロシアの核使用威嚇や、核使用へのエスカレーションの危険が「最も懸念すべき出来事だ」と警告。ロシアの核使用に対する戦術核での反撃などが取り沙汰され、「核兵器の使用が『通常のこと』にされつつあるが、これは冷戦以来最も危険な状況だ」と指摘しました。

 この状況下で核兵器禁止条約は「ますます重要になっている」として、クメント氏は、(1)核軍縮へ具体的な前進を図ろうとする国際社会の多国間の取り組みである(2)一部の国が核兵器の重要性を再強調しようとしているなかで、核抑止力論からの出口を示している―という2点を指摘しました。

 「多国間の取り組み」の点では、昨年6月の締約国会議が「多くの市民社会組織や、科学者、被害を受けたコミュニティーの代表が、大きな熱意と献身を示した」ことを高く評価しています。

 また条約は、「平和と安全のためだ」という抑止力論の主張の核心に異議を唱えており、核抑止力の信奉者が猛烈に反対するなかでも、「核の現状維持に正統性はない」という国際世論を強め続けていると指摘。昨年11月の20カ国・地域(G20)の宣言が、いかなる核脅迫も許されないと述べたことに言及しました。抑止力論者の禁止条約への強い反対は、「条約の持つ力と、変革の原理の兆候かもしれない」と述べています。

 クメント氏は「条約は、核の秩序によって権利を奪われている大多数の国々に発言権を与えることで、すでに重要な影響を及ぼしている」と指摘。今後も参加国の増加や非人道性の議論の継続に力を入れる意向を示しました。


pageup