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2023年1月25日(水)

主張

「新しい資本主義」

経済のゆがみをまず直視せよ

 岸田文雄首相は施政方針演説で昨年に続き「新しい資本主義」を掲げました。新自由主義の弊害についての記述がなくなり、中国、ロシアを念頭に、経済でも対決に勝つことが前面に据えられました。「権威主義的国家からの挑戦に直面する中で、市場に任せるだけでなく、官と民が連携し、国家間の競争に勝ち抜くための、経済モデル」が世界で求められていると言います。世界を敵と味方に分け、相手を排除することで得られるものは何もありません。

矛盾さらに広げる大軍拡

 昨年の施政方針演説では「市場に依存しすぎたことで、公平な分配が行われず生じた」として格差、貧困など「新自由主義的な考え方が生んだ、さまざまな弊害」の克服を主張しました。

 ことしの演説で格差には一言触れただけです。力説したのは「重要物資や重要技術を守り、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを維持する経済モデル」です。昨年、成立させた経済安保法の柱が「新しい資本主義」の中心となりました。

 米中の覇権争いの中で日本が米国と一体となり、中国との競争に勝つために、政府が大企業を支援したり、統制したりするのが経済安保法です。

 重要物資・技術の保護については、施政方針演説とほぼ同じ文言が13日の日米首脳会談の共同声明に盛り込まれています。米国に対する公約です。

 「市場に任せず」といっても国民の暮らしや労働者の権利を守るために大企業を規制するわけではありません。経済安保のための国家による介入です。

 対決と排除の経済モデルは、すでに深刻化している日本経済のゆがみをさらに拡大させます。最大の貿易相手である中国を経済的に排除しようとしても、打撃を受けるのは日本の経済と国民の暮らしです。

 中国の覇権主義的行動を正面から批判しつつ、中国を含む平和の枠組みをアジアに築く外交に転換することこそ喫緊の課題です。岸田政権が進める大軍拡はアジアの緊張を高め、日本経済の発展を妨げます。

 施政方針演説は経済安保を強調する一方、国民が最も切実に求めている物価対策や賃上げにはおざなりです。具体策もありません。

 「国家間の競争に勝ち抜く」と言いますが、国際競争に勝つとの名目で1980年代以降、日本企業の海外移転が進み、賃上げは抑えられました。

 アベノミクスは金融頼みで円安・株高をつくり出し、内需と実体経済をさらに落ち込ませました。2022年の貿易赤字は過去最大です。かつて輸出で巨額の貿易黒字をあげた日本経済はいまや製造業の衰退が言われるほどです。

アベノミクスへの反省を

 施政方針演説はイノベーションやスタートアップの育成を成長戦略の柱としますが、日本経済の構造的なゆがみを正すことなくして「成長しない国」から抜け出すことは不可能です。

 大企業がため込んだ内部留保を賃上げにどう活用させるのか。円安・物価高を加速させた「異次元の金融緩和」の出口戦略をどうするのか。首相が一言も触れなかった問題こそ直視すべきです。10年間のアベノミクスへの反省がまず必要です。


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