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2023年1月24日(火)

施政方針演説

国民不在 大転換押し付けるな

 「今回の決断は、日本の安全保障政策の大転換だ」―。岸田文雄首相は23日の施政方針演説で、敵基地攻撃能力保有の大軍拡について、こう誇ってみせました。岸田首相は「1年を超える時間をかけて議論し、検討を進め、新たな国家安全保障戦略などを策定した」と強弁します。しかし、その「議論」「検討」「策定」の過程に肝心の国民の姿があったでしょうか。選挙で信を問うことも、国会での審議もなしに、安全保障の大転換を強行しながら、そのことへの反省もない首相に強い怒りすら沸き起こりました。

 首相は演説で「近代日本にとって、大きな時代の転換点は二回あった」として「明治維新」と「終戦」をあげ、「今、われわれは再び歴史の分岐点に立っている」と強調しました。

 「明治維新」「終戦」はたしかに、近代日本の「転換点」です。明治維新以降、日本は「富国強兵」を掲げ、アジア諸国へ侵略と戦争の道を突き進み、国内外におびただしい数の犠牲を出しました。「終戦」はその破綻の証明であり、戦後は、その反省の上にたって平和で民主的な日本への歩みを始めました。憲法9条はその象徴だったはずです。

 アジアでは戦後、朝鮮戦争やベトナム戦争など、さまざまな戦争が起こりました。しかし、自衛隊員が外国人を殺さず、戦死者も出さず、日本が戦火にまみれることもなかったのは、9条が日本の平和を根底から支え続けたからです。近代日本の二回の「転換点」のうえに立って、「今こそ、新たな方向に足を踏み出さなければならない」と呼びかけるのならば、本来、9条のさらなる発展であるべきです。

 ところが、首相が目指す道は全く違います。昨年末、「安保3文書」を閣議決定し、1月の日米首脳会談では日米共同で敵基地攻撃能力を推進することに合意。歴代政府が9条のもとで建前としてきた「専守防衛」を公然とかなぐり捨て、日本が攻撃を受けていない下でも、米国の戦争に参戦していくことになります。首相がいう「新たな方向」は、9条と戦後日本の歩みの否定にほかなりません。

 ところが、首相は、そのことを真正面から説くこともしません。施政方針演説では、「(今回の決断は)憲法、国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としてのわが国としての歩みを、いささかも変えるものではない」などと嘯(うそぶ)きました。

 しかし、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃能力を使用し、自衛隊に相手国の領土を直接攻撃する「矛」の役割まで担わせながら、なぜ「憲法、国際法の範囲内」「専守防衛の堅持」なのでしょうか。うそとごまかしで「日本の安全保障の大転換」を強行することは許されません。

 首相は「先送りできない課題に、正面から愚直に向き合う」「憲法改正もまた、先送りできない課題だ」と明文改憲にも踏み込んでいます。首相が憲法破壊の暴走を続けるなら、それを阻止することが立法府の役割です。通常国会では暴走阻止の論戦こそ求められます。(国会取材団キャップ 佐藤高志)


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