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2023年1月19日(木)

主張

自主申告への介入

納税者の権利守れの声大きく

 岸田文雄政権は23日開会の通常国会に、「税務相談停止命令制度」(命令制度)の創設を盛り込んだ税理士法改定を含む所得税法等の一部改正案を提出し、3月中の成立を狙っています。同制度は、納税者同士が税の仕組みを学び、教え合って自主申告を進める活動に、権力が恣意(しい)的に介入できるものだと反対の声が上がっています。

相談活動が弾圧される

 命令制度は、税理士でない者の税務相談を停止させる権限を財務相に与え、停止させるための実力行使も可能にするものです。「停止命令を出すかどうか」を調べるための質問検査権が国税庁・税務署に与えられます。

 財務相の命令に従わなければ、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す規定も設けます。国税庁・税務署の調査を拒否したり、うその答弁をしたりすると30万円以下の罰金に処すとしています。

 日本共産党の小池晃参院議員と田村貴昭衆院議員が昨年12月末に行った財務省への要請では、本来自由であるべき納税者同士の相談活動に国が介入できる仕組みとして拡大解釈される恐れがあることが浮き彫りになりました。

 戦前、日本の税制は税額を税務署が勝手に決めて国民に押し付ける賦課課税制度でした。「国民はその能力に応じて戦費を負担すること」とされ、戦費調達が強行されました。実際は、国民の負担の限度をはるかに超えた重税と収奪が繰り返されました。

 戦後、日本国憲法のもとで「納付すべき税額が、納税者のする申告により確定することを原則とする」(国税通則法16条)という申告納税制度となりました。「国民主権」の原則に基づき、主権者・国民が自分の税金を計算し、申告し、納税することを通じて政治に参加するというのが理念です。

 命令制度の創設が、敵基地攻撃能力の保有などの大軍拡のための増税や、中小事業者に負担を強いる10月からのインボイス(適格請求書)の導入と軌を一にしていることも見過ごせません。

 「自分の税額は自分で決める」という申告納税制度を形骸化する命令制度の創設は、税の使い方や集め方に異議を唱える集会や宣伝などの運動を取り締まるために利用されかねません。憲法が保障する言論・結社・表現の自由の侵害につながる大問題です。

 岸田政権は大軍拡を国会や国民に説明なく決定しました。命令制度も突然持ち出しました。一方的に決めるやり方はまさに「新しい戦前」を想起させます。

 各地の民主商工会や農民連、土建組合、生活と健康を守る会などは緊急の反対署名を開始しました。税の重圧に抗議する3月13日の「重税反対全国統一行動」を結節点に運動を呼びかけています。

危険を広く国民に知らせ

 税理士でない民商事務局員が会員の確定申告書作成を手伝ったことを税理士法違反とした岡山県の倉敷民商弾圧事件の広島高裁判決では、納税者同士が教え合って申告することまで禁じていません。小池議員らの要請に対して財務省も「判例は尊重する」と回答しました。

 申告納税制度を骨抜きにし、憲法にも違反する法案の中身を知らせ、納税者の権利を守れの声を広げることが大事です。


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