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2023年1月16日(月)

民主主義壊すな イスラエルで大規模デモ

司法統制「改革」案に抗議

 【カイロ=秋山豊】イスラエルのテルアビブで14日夜、ネタニヤフ政権による「司法改革」提案に抗議する大規模デモが行われ、約8万人(現地時間の同日午後8時半時点、警察推計)が参加しました。各地からバスなどで駆けつけた参加者もいました。デモは、エルサレムと北部ハイファでも行われました。


 イスラエルに成文憲法はありませんが、国の基本を定める基本法があり、最高裁は、それに合致しないと判断した法律を無効にできます。政府は、行政と司法の「バランスを回復」するとして、最高裁が無効にした法律を、議会の多数によって再制定できるようにすることを提案。また裁判官の任命を、時の政府がコントロールできるようにする改革も提案しており、司法の独立を著しく損ね、民主主義を破壊するとの批判が広がっています。

 テルアビブでのデモでは、ネタニヤフ政権は「独裁だ」との声も出ました。ある女性はメディアの取材に対し、「暗黒国家の始まりにいるような気分だ」と述べ、孫の未来を守るために参加したと語りました。

 「司法改革」案への反対は各界に広がっています。テルアビブでのデモには、バラク元首相やリブニ元法相、ガンツ前国防相らも参加しました。

 ハユット最高裁判所長官は12日、司法の独立は「多数派の統治を多数派の専制政治に変えさせない」ために極めて重要だとして、ネタニヤフ政権の「司法改革」が認められれば「民主主義は致命的な打撃をこうむる」と批判しました。弁護士会や法学者らも「司法改革」に反対しています。

 ネタニヤフ氏はかつて首相在任中に、収賄、詐欺、背任の罪で起訴されており、首相に返り咲いた現在も公判が続いています。このことが「司法改革」案に対する国民の不信を深めています。もし議会がネタニヤフ氏の免罪を決定し、最高裁がこれを無効だとしても、議会が最高裁の判断を覆せる可能性があるからです。

 政府はまた、裁判官を選ぶ司法選考委員会のメンバーを9人から11人に増やすとしています。裁判官3人、閣僚3人、議員3人、政府が任命した人物2人で構成しようとしており、政府が裁判官の任命を管理できるようになります。

 昨年12月に発足したネタニヤフ新政権は、極右政党や宗教政党の党首らが閣僚の重要な地位に就いています。イスラエル民主主義研究所が今月初めに発表した世論調査によると、世俗的なユダヤ人の70%が、同国の民主的統治は重大な危機にあると回答しました。


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