しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年1月14日(土)

主張

世界経済の減速

格差をただす政策の総動員を

 世界銀行が2023年の世界経済の成長見通しを22年6月時点の3%から1・7%に大幅に引き下げました。年末から国際機関が相次いで公表した報告書では、各国の実質賃金の低下や途上国を中心とした食料難の深まりが示されました。格差をただす政策の総動員が求められています。

消費税減税が成長に有効

 世銀によると、コロナ危機の長期化、ロシアのウクライナ侵略、物価高騰などいくつもの要因が重なって、主要国・地域の23年の成長率は22年からさらに落ち込むと見込まれます。ユーロ圏0%、米国0・5%、日本1%です。

 国際労働機関(ILO)の「世界賃金リポート」は、22年上半期(1~6月)の世界の実質賃金が物価高によって前年同期比0・9%低下したことを明らかにしました。日本の実質賃金はリーマン・ショックが起きた08年の水準も下回っています。

 報告書は貧困や格差の深刻化を防ぐ政策が急務だとしています。特に「最低賃金は低賃金労働者とその家族の所得、購買力を守る手段だ」として各国に引き上げを求めました。男女の賃金格差の是正も呼びかけました。

 ドイツ、フランスでは物価上昇に対応して22年は3回も最賃を引き上げ、それぞれ時給12ユーロ(約1690円)、11ユーロにしました。

 日本の22年の最賃は全国加重平均で時給961円です。前年比3・3%の引き上げにすぎません。最低生計費すら下回っています。生計費の上昇に対して実質マイナスになっている最賃を緊急に再改定するとともに、全国どこでも時給1500円以上に引き上げるべきです。

 「付加価値税(消費税)減税はインフレを抑え、低所得の家計の負担を軽減する」とILOのリポートが指摘したことも重要です。

 ドイツ政府が20年に付加価値税の税率を半年間、引き下げたことが国内総生産(GDP)を0・3%押し上げたとの試算を紹介しました。22年にスペインが電気、ドイツがガスの付加価値税を減税したことも有効だったと評価しました。消費税減税の効果は試され済みです。

 国連貿易開発会議(UNCTAD)は22年12月に発表した報告書で、食料価格の高騰とドル高が「二重の重荷」となって途上国を苦しめていることに懸念を示しました。

 農産物価格の国際的な指標は20年から22年にかけて1・5倍に上昇しました。食料そのものの値上がりに加え、米国が政策金利を引き上げ、外国為替市場でドルが上昇したことで、各国の輸入価格が急上昇しました。

途上国債務の減免が急務

 UNCTADは、国際通貨基金(IMF)が決めた、途上国支援の実行を求めています。ロシアのウクライナ侵略に伴う国際市場の混乱で食料輸入が困難になった途上国に1年間緊急の融資を行う制度です。

 途上国の対外債務はドル高でさらに膨張し、コロナ対策や生活支援に向けた財政出動を妨げています。貧困をなくす取り組みは、平和な世界の実現にとっても欠かせません。緊急支援だけでなく、途上国債務の減免を急ぐ必要があります。日本が23年の議長国を務める主要7カ国(G7)首脳会議の重要なテーマです。


pageup