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2023年1月8日(日)

主張

安保政策の大転換

危険な米戦略追従から脱却を

 岸田文雄首相は、昨年末に閣議決定した「国家安全保障戦略」など安保3文書を踏まえ、「防衛力の抜本的強化」に全力で取り組むと表明しています(1日の年頭所感)。3文書は、歴代政府が掲げてきた「専守防衛」の原則を投げ捨て、「敵基地攻撃能力」の保有に初めて踏み込むなど、戦後の安保政策を大転換し、空前の軍拡と「戦争国家づくり」を推し進めようとするものです。こうした危険な動きを許さず、憲法と平和、暮らしを守り抜くため、国民的規模でたたかいを広げることが重要です。

米軍支援で敵基地攻撃

 新たな国家安全保障戦略は「平和安全法制(=安保法制)の制定等により、安全保障上の事態に切れ目なく対応できる枠組みを整えた」と指摘しています。その上で、今回の戦略は「その枠組みに基づき…戦後の我が国の安全保障政策を実践面から大きく転換するものである」と自ら強調しています。

 「実践面からの大転換」とはどういう意味か。

 2015年成立の安保法制は、歴代政府が違憲としてきた集団的自衛権の行使を法的に可能にし、戦後の安保政策を百八十度転換させました。狙いは、海外での米国の戦争で米軍を支援するため自衛隊が戦闘に参加することでした。しかし、現実には「敵基地攻撃能力は保有しない」という従来の政府方針が制約になっていました。

 政府は当時から、安保法制に基づき集団的自衛権の行使として敵基地攻撃をすることも「法理上はあり得る」(15年6月1日、衆院安保法制特別委員会、安倍晋三首相=当時)という見解を示していました。一方で「われわれは(敵基地を)攻撃する能力はそもそも持っていないわけで、個別的自衛権においても…ましてや集団的自衛権(の行使)においては実際には(敵基地攻撃を)想定はしていない」(同)と明言していました。そのため、他国領域で集団的自衛権を行使する例としては「ホルムズ海峡における機雷掃海しか念頭にはない」(同)としていました。

 ところが、今回、敵基地攻撃能力の保有を打ち出したことで、自衛隊は集団的自衛権の行使として米軍を支援するため相手国領域にミサイル攻撃などを仕掛けることが可能になります。

 この「実践面からの大転換」はどこから来たのか。

 米軍は今、中国に対抗する「太平洋抑止イニシアチブ」(PDI)という構想の下、同盟国も動員し、沖縄など南西諸島を含む「第1列島線」に「精密打撃網」を構築しようとしています。具体的には艦船搭載の巡航ミサイル・トマホーク、戦闘機搭載のスタンド・オフ・ミサイル(JASSM)などの配備を強化しようとしています。

日本を危険にさらす道

 岸田政権は安保3文書に沿って、23年度予算案の軍事費にトマホークやJASSMの取得費、地上配備の12式地対艦誘導弾の量産費を初計上するなど、長距離ミサイルの導入を進めようとしています。今回の敵基地攻撃能力の保有決定は、米国の軍事戦略に付き従った結果に他なりません。

 3文書は、「日本を守る」ものではなく「米国の戦争に日本を巻き込む」ものです。相手国の報復攻撃を招き、逆に日本を危険にさらします。今必要なのは米軍事戦略への追従から脱却することです。


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