2023年1月5日(木)
エルサレムのモスク敷地
イスラエル閣僚 立ち入る
パレスチナ・アラブ諸国批判
緊張高める恐れも
【カイロ=秋山豊】イスラエルで昨年末に発足したネタニヤフ新政権のイタマル・ベングビール国家治安相は3日朝、エルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地アルアクサ・モスク(イスラム教礼拝所)敷地に立ち入りました。これに対し、パレスチナやアラブ諸国が強く批判しています。
ベングビール氏はツイッターで、「神殿の丘(同地のユダヤ教の呼称)は全ての者に開かれている」と述べました。動画によると、ベングビール氏は、厳重な護衛に守られながら、正統派ユダヤ教徒らとともに敷地に立ち入り、約15分間滞在しました。ベングビール氏は極右政党党首で、ユダヤ教の聖地でもある同地でユダヤ教徒の礼拝を認めるよう求めてきました。
パレスチナのシュタイエ首相は、アルアクサ・モスクをユダヤ教の礼拝の場に変える企ての一つだとして、同モスクへの「襲撃にたち向かう」よう呼びかけました。またガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは「この行動の継続は、全ての当事者を大きな衝突に近づけるだろう」と述べました。
イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、東エルサレムを占領し、併合しました。これまでの取り決めでユダヤ教徒はこの敷地に立ち入ることはできても、礼拝はできないことになっています。
2000年、当時のリクードのシャロン党首が敷地に入った際には、パレスチナの人びとの抗議運動が高まり、第2次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)に発展しました。今回の訪問で衝突などは起きていませんが、さらなる緊張や暴力の引き金となる恐れもあります。
イスラエル首相府の当局者は、ネタニヤフ氏が、イスラム教徒だけが敷地内で礼拝できるという数十年来の現状を全面的に維持する決意だと述べ、事態の沈静化に努めています。
ベングビール氏の行動に対し、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなどが批判。ヨルダン外務省はイスラエル大使を召喚し、「歴史的および法的現状」を変える企てをやめるよう求めました。UAEと中国は、この問題で国連安保理の公開会合を招集するよう求めています。
国連のグテレス事務総長は、「全ての当事者が聖地の内外で緊張を高める行動を自制するよう呼び掛ける」としています。








