2023年1月4日(水)
23年 内政展望
憲法生かす社会か 正念場
物価高に追い打ち 社会保障大破壊計画
| |
|
岸田文雄政権は昨年、長引くコロナ禍と40年来で最大といわれる物価高で苦しむ市民生活に悪政で追い打ちをかけるとともに、際限ない国民負担増をもたらす大軍拡へと危険な一歩を踏み出しました。今年は、戦力の不保持と生存権の保障を定めた憲法に基づき社会保障を充実させるのか、大軍拡と引き換えに社会保障の破壊をさらに進めるのかが、かつてなく鋭く問われる年になります。
高齢者を標的
長年の自公政権の悪政にコロナ禍が加わり、2022年の国内出生数は6年連続で下落し、統計を取り始めた1899年以降、初めて70万人台に落ち込む見通しです。「国民を守る」(岸田首相)というなら、安心して子どもを生み育て、老後を迎えられる社会の実現にこそ力を尽くすべきです。
ところが岸田政権は安倍・菅両政権を踏襲し、「全世代型社会保障」の名で社会保障の負担増・給付削減を進めようとしています。
その最大の標的が高齢者です。国民年金(基礎年金)は40年加入しても月6万5000円にしかならず、高齢者の貧困を生んでいます。22年の物価上昇が政府統計で2・5%に達しているのに、政府は公的年金の支給額を4月分から実質0・3~0・6%減らそうとしています。少子高齢化に合わせ支給水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」を、過去の繰り越し分を含めて発動しようとしているからです。
年金だけでは暮らせないため、高齢者の生活保護の利用が増え続けています。直近では、生活保護を利用する世帯の55%を高齢者世帯が占めています。
生活保護制度の最大の柱となっている生活扶助基準について、政府は、今年10月の改定で高齢者世帯を中心に据え置く方針です。特に75歳以上の世帯の改定率は0~0・6%となっており、急速な物価上昇のもとで実質大幅減となります。
生存権をいっそう脅かすとともに、経済的な余裕のなさから友人や親せきとの関係を保つことができない「社会的排除」の状況にも拍車がかかります。
根こそぎ削減
医療、介護、障害福祉は6年に1度の同時報酬改定(24年度)に向け、今年も負担増・給付削減の策動が続きます。
医療では、75歳以上の医療保険料を、高所得者だけでなく中間所得者まで対象に引き上げる改定法案が、通常国会に提出される方向です。引き上げ幅は加入者1人当たり平均で年4100円。対象は75歳以上で年収153万円超の人の約4割に上ります。75歳以上の医療費窓口2割負担の導入(昨年10月)に続く負担増です。
新型コロナ対策では、感染の波ごとに病床がひっ迫し、疲弊する現場を支援するのではなく、締め付け強化に走っています。昨年の臨時国会で感染症法を改定し、医療機関に罰則付きで感染症病床の確保を義務付け。他方で、コロナ患者用の病床確保のための補助金や発熱外来への補助金、PCR検査への診療報酬を削減するなどしてきました。さらなる病床削減を狙い、25年以降の地域医療構想の「バージョンアップ(改訂)」に向けた議論も進みます。
介護では、利用料2割負担の対象拡大、一定所得を超える65歳以上の介護保険料引き上げ、老健施設などの多床室(相部屋)の有料化が、24年度改定で狙われています。政府は昨年末に実施を決定しようともくろんだものの、世論と運動の大反対に押され先送り。利用料と保険料は今夏までに、多床室は今年度中に決めようと、社会保障審議会の部会・分科会で議論を続けます。通常国会や統一地方選でこれらの負担増が大争点となることを避け、選挙後に政府の裁量で決めようという算段です。
充実の道ある
岸田政権は高齢者への負担増を矢継ぎ早に繰り出す一方、出産育児一時金の増額や「こども家庭庁」の創設(4月)などで「世代間の公平」をアピールします。しかし、こども家庭庁の23年度予算案は、移管される各省の22年度予算と比べ2・6%増にすぎず、首相自ら掲げた子ども関連予算の「将来的な倍増」はかけ声倒れになっています。高齢者の負担を増やし、「現役世代」に恩恵を回すというのは、社会保障費への国の責任を手放すための方便です。
社会保障費の自然増は23年度予算案で1500億円圧縮。本来は医療の充実に回すはずの薬価(薬の公定価格)の引き下げ分や、75歳以上の医療費窓口2割負担、雇用調整助成金のコロナ特例の終了など国民負担で賄います。
負担増や暮らし予算の歳出削減ではなく、社会保障を充実させる道はあります。日本共産党は、大企業・富裕層への優遇税制や軍事費などを見直して20兆円の財源を確保し、▽物価高に見合う年金引き上げ▽75歳以上の医療費窓口2割負担の中止▽子ども医療費無料化▽義務教育の給食費無償化▽消費税5%への減税―などを進めるよう提案しています。