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2023年1月3日(火)

23年 外交展望

“軍事力に裏付けられた外交”でなく 憲法に基づく道 今こそ

 「わが国はまず、わが国に望ましい安全保障環境を能動的に創出するための力強い外交を展開する。そして、自分の国は自分で守り抜ける防衛力を持つことは、そのような外交の地歩を固めるものとなる」。昨年末、岸田政権が閣議決定した「国家安全保障戦略」の外交観です。

 同戦略を含む安保3文書は、敵基地攻撃能力の保有や5年以内の軍事費2倍化など、「専守防衛」や「軍事大国にならない」といった従来の安保政策を完全に投げ捨て、日本が本格的な軍事大国となる道筋が描かれました。そこで示されたのは“軍事力に裏付けられた外交”という典型的な力の論理です。

中国包囲網

 いうまでもなく、国力低下が著しい日本単独では何の脅しにもなりません。そこで安保戦略は、外交課題の第一に「日米同盟の強化」、第2に、日米豪印(クアッド)や北大西洋条約機構(NATO)など「同志国」との連携をあげ、軍事同盟強化を際立たせています。さらに、過去最大となった政府開発援助(ODA)に他国軍支援を盛り込むなど、ODAの軍事化が際立っています。いずれも念頭にあるのは「中国包囲網」です。

 「自分の国は自分で守り抜ける防衛力」などと言いますが、米軍の指揮下で、海外での武力行使、とりわけ「台湾有事」に参戦するための軍事力強化であることは明らかです。

 他方、ロシアとの領土問題については、第2次安倍政権における屈従外交を総括せず、打開策を何一つ打ち出せていません。中国との尖閣諸島問題にいたっては一切の言及がなく、自らの領有権さえ主張していません。これのどこが「力強い外交」なのでしょうか。

戦争に動員

 一方、外務省が毎年発行している「外交青書」の前身である「わが外交の近況」1968年度版に、このような一文があります。

 「わが国は日本国憲法に基づき平和国家としての選択を行なったので、ここに日本の外交努力の特別の重点がおかれている。日本国憲法が理想として高く掲げている平和国家とは、自らの自由と安全と繁栄を保つのみに甘んじることなく、進んで戦争のない世界の創造を目指し、『平和への戦い』のために積極的な貢献を行なう国家である。わが外交の究極の目標は、正にこのような意味における平和国家の理想の実現にある」

 実際には、日本外交の一貫した基軸は対米従属・日米同盟強化です。1960年代から70年代にかけては、日本がベトナム侵略戦争の出撃拠点となり、日本政府もこれを容認してきました。そうした安保体制の制約の下でも、「専守防衛」の原則を打ち立て、憲法の平和原則に基づく積極外交を強く意識した時期があったのです。

 さらに、72年版には、このようなくだりもあります。「わが国は、経済上その能力を持ちながらも、軍事大国への途(みち)を進まないことを決意している」「このような特異な生き方を選んだわが国の行く手には、なお多くの困難が予想されるが、これを乗り越えて前進するためには、強固な意志を持ち続けるとともに国民全ての英知と努力を結集して行かなければならない」

 実際には、日本は70年代以降、本格的な軍備増強に着手しています。同時に「軍事大国にならない」といった原則を打ち立て、一定の“歯止め”をかけてきました。大軍拡のために増税、国債、コロナ対策の積立金など、ありとあらゆる財源を必死にかき集めている岸田政権は、真逆の道を歩んでいるといわざるをえません。

 「今日のウクライナは明日の東アジアだ」。岸田文雄首相はこう繰り返し、敵基地攻撃能力の保有や大軍拡の口実にしています。しかし、冷静に見る必要があるのは、日本が周辺国と交戦する蓋然(がいぜん)性が最も高いのは、米国が主導した戦争に動員されるケースです。米国にとって、日本列島、とりわけ南西諸島は米本土を守るための“防波堤”にすぎません。その先には、途方もない破壊と流血が待っています。

 だからこそ、戦争に備えるための軍拡・同盟強化ではなく、戦争を回避するための外交が求められています。それこそが、真の安全保障です。日本政府は安保3文書を撤回し、過去の日本外交を総括した上で、軍事力強化・同盟強化一辺倒から脱却し、今こそ、憲法に基づく外交を本気で実現するときです。

なりふり構わない「延命と保身」

 2023年も、長期化するロシアのウクライナ侵略が各国の外交・安全保障に深刻な影響をもたらしています。こうした中、岸田政権にとって最重要の外交課題は、米国など「同盟国・同志国」との連携強化であり、その一環としての主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の成功です。支持率・求心力低下にあえぐ中、何としても5月のG7を主催するため、岸田首相はなりふり構わない「延命と保身」に突っ走っています。

 首相は1月上旬に英仏イタリアを歴訪した後、訪米。バイデン大統領との首脳会談は13日に予定されています。さらに、1月中に日米2プラス2(安全保障協議委員会)が開催されるとの見方もあります。安保3文書に明記された日本の「敵基地攻撃能力」行使は米軍の情報に基づき、日米共同で行われることになるため、2プラス2では、新たな共同作戦計画の策定に向けた日米軍事協力の指針(ガイドライン)改定が提起される可能性もあります。

 5月に開かれるG7で、岸田首相は「被爆地・広島出身の首相」として、「核兵器のない世界」実現への取り組みをアピールすることで、支持率回復につなげたい考えです。しかし、岸田政権は核兵器禁止条約に一貫して背を向けてきたばかりか、昨年6月の第1回核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加さえ拒否。世界を失望させました。

 近隣外交をめぐっては、昨年11月には首相が中国の習近平国家主席、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と相次いで会談。一方、過去最大の弾道ミサイル発射を繰り返している北朝鮮との対話や、ロシアとの領土問題では、何ら展望が見いだせていません。

主な外交日程
1月上旬~中旬 岸田首相が米国、英国、イタリア、フランスを訪問
1月16~20日 世界経済フォーラム年次総会(スイス・ダボス)
1月中? 日米安全保障協議委員会(2プラス2)
5月19~21日 G7首脳会議(広島)
9月 国連総会(米国・ニューヨーク)
9月9~10日 G20首脳会議(インド・ニューデリー)
11月27~12月1日 第2回核兵器禁止条約締約国会議(米ニューヨーク・国連本部)
11月30~12月12日 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(アラブ首長国連邦)
11月中旬 APEC首脳会議(米サンフランシスコ)
12月 日ASEAN特別首脳会議(東京)

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