2022年12月30日(金)
きょうの潮流
冬の青空を突き刺すように凜(りん)と伸びる樹形。百を超えるイチョウの木々が整然と並ぶ美しさに思わず見とれます。いま、都心の自然豊かな憩いの場が危機に瀕(ひん)しています▼26日、東京都は神宮外苑再開発の環境アセス審議会を開きました。委員から批判が相次いだための異例の追加審議。年の瀬に突如開催を発表し、傍聴受け付けも3日間だけで会議を知らない記者もいたほど。都の姿勢がうかがえます▼事業者の説明もお粗末。反対の論陣を張る日本イコモスの石川幹子中央大教授は「何も答えていない。全滅です」。委員からも再度、厳しい意見が出たものの会議は淡々と終了しました▼再開発に住民の声は反映されていません。そもそも計画が知らされたときには約1千本の樹木がなくなる一方、190メートル級の超高層ビル2棟を新設し、神宮球場、ラグビー場を建て替える、巨大計画が既定路線のように進んでいました▼東京五輪での国立競技場建て替えと連動して進んできた開発には、森喜朗元首相の影がちらつきます。都議会で共産党が公開させた都の「取扱注意」文書(2012年)。そこには、都の幹部が五輪を招致できなくても再開発は進めるとし、森氏が「素晴らしいよ」と喜びつつ応じるやりとりがあります。国立競技場のためと見えた高さ制限の大幅緩和も再開発のためだったのか▼反対の声は広がり、国会でも超党派議連が結成され「再開発見直し」を求めています。無理が通れば道理引っ込む。そんな開発を許す訳にはいきません。








