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2022年12月30日(金)

デニー知事語る沖縄の展望

自治体外交で平和貢献

 今年、本土復帰50年の節目を迎えた沖縄県。知事選では「オール沖縄」の玉城デニー知事が勝利しました。岸田政権が安保3文書で大軍拡を掲げるなか、デニー知事が報道各社のインタビューに応え、平和の構築や辺野古米軍新基地建設反対などについて展望を語りました。(柳沢哲哉)


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(写真)インタビューに応える玉城デニー知事

 ―台湾有事が懸念され、沖縄が武力攻撃に巻き込まれる可能性が指摘されています。

 政府の一番の責任は、有事につながるような偶発的な状況を絶対に排除することです。そのためには、地域の安全保障環境をどう構築するかの議論の場を設けることなど、国家間における緊張緩和と平和と信頼関係を構築するプロセス、ホットラインを常につないでおくことが重要です。

 日本が有事に巻き込まれたら国民はどういう状態になるのか考えなければなりません。さまざまな資源を外国に依存している日本という国家が果たして独立して存立できるのでしょうか。政府は、77年前の沖縄の状況を再び引き起こす状況にはしない、有事には絶対にさせないというメッセージをしっかり伝える必要があります。

 ―有事にさせないため、知事として自治体外交をする考えはありますか。

 沖縄が琉球王国時代から600年以上にわたる地域間交流を続けていることは、歴史的にも非常に有益で、重要な関係を築いてきていると考えます。

 沖縄と中国や台湾との関係は、例えば留学生の相互派遣や県の海外事務所の設置、経済交流など現代的にも有効的に機能しています。沖縄県にとって重要な国・地域である中国、台湾、韓国へ訪問し、お互いの人材、文化、学術の交流を促進して地域の信頼醸成や緊張緩和への貢献を図っていきたい。沖縄を人間の安全保障を構築する平和の拠点にし、平和で豊かな島を追求します。

新基地阻止へ全力あげます

丁寧に国内発信 国連訴えも

「新たな建議書」 着実に実現へ

 ―復帰50年の今年を終え、2023年を沖縄にとってどのような年にしたいですか。

 今年1年を漢字一文字でまとめると、復帰50周年、コロナ禍からの回復、首里城の復興ということで「復」という字をあてたいと思います。

 私は、祖先への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクル(真心)を大切にするとともに、自立、共生、多様性、包摂性と寛容性、すべての人の尊厳を守るといった理念や考え方に基づいてさまざまな施策を進めてきました。

 米軍基地問題など沖縄の特殊事情から派生する課題については、さらにその取り組みを進化させなければならないと思います。

 「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」で示した未来への姿勢を着実に展開していきたい。

キャラバン通じ全国情報発信も

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(写真)埋め立て土砂投入の強行から4年となり、辺野古新基地建設を止めようとアピールする人たち=14日、沖縄県名護市辺野古

 ―名護市辺野古の米軍新基地建設を止める取り組みは。

 国の設計変更申請を県が不承認としたことにより、防衛省沖縄防衛局は大浦湾側の工事ができない状況であり、依然として埋め立て工事全体を完成させることができない状態が続いています。

 全国知事会とも連携して、憲法が定める地方自治の本旨に基づいた本来あるべき地方自治の実現を求めるとともに、不承認処分を取り消す国の裁決や是正の指示に関する訴訟で、県の主張が認められるよう全力を尽くします。

 法的な論点だけではなく、沖縄県がなぜ不承認処分を行ったのかという正当性などについても、全国でのトークキャラバンなどを通じて分かりやすい情報発信に努めたい。

 問題解決に向けた機運の醸成をはかるために国際社会に対して、沖縄における基地負担の現状や辺野古新基地建設になぜ反対するのかということも丁寧に発信していくことが重要であり、国際連合で訴えることについて検討を進めています。

 沖縄県が求める民主主義に基づいた対話によるプロセスによって最終的に解決に結びつける糸口にしていきたいと考えています。

自衛隊の増強に県民の不安強く

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(写真)安保3文書に反対し、「戦争は嫌だ」と声をあげる集会参加者=19日、那覇市

 ―安保3文書に盛り込まれた自衛隊増強をどうみますか。

 沖縄の基地負担の軽減は、米軍と自衛隊と合わせて考える必要があります。米軍専用施設が集中する異常な状況のなかで自衛隊が増強されることは、さらなる基地負担が増えていくことにほかなりません。

 3文書は閣議決定でなされました。国会での議論を十分に行うべきであり、政府はさまざまな国民負担があることを真摯(しんし)に受け止めていただきたい。

 先島地域だけでなく自衛隊勝連分屯地へのミサイル部隊配備といった動きもあり、米軍基地の整理縮小が現実的に進んでいないなかで、自衛隊の増強が重なっていくことに多くの県民も不安を抱かざるを得ない現状があります。地域への十分な説明や協議の場を設けることなどを政府がしっかり果たしていただきたいと申し上げておかなければなりません。

経済と県民生活向上に責任重大

 ―2期目の抱負は。

 (社会・経済・環境の三つの側面が調和した「持続可能な沖縄の発展」と「誰一人取り残さない社会」を目指す)「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づく施策を推進します。新型コロナウイルス感染症の長期化による深刻な経済の状況、子どもの貧困問題、女性や若年妊産婦の課題、ヤングケアラーなどの課題解決に取り組まなければなりません。県経済と県民生活の再生に向けて、人流、物流、投資などアジアの結節点となりうる沖縄のポテンシャル(潜在能力)をさらに生かしていくことも非常に重大です。

 県知事選では、私が訴えた県経済の再生、子どもや若者、女性の新たな課題に対する取り組み、基地問題、特に辺野古新基地建設反対などの施策について多くの県民から引き続き取り組んでほしいと信任を得させていただいたと受け止めています。同時にその責任も重大性を増していると認識しています。

 今後も県政与党の県議と県政の課題に対する共通認識を深めていくことはもちろん重要ですし、市町村における課題解決を県と市町村が着実に推進していくために共通の認識を有する議員や活動している方々との連携も重要ですので、そういう方々との連携も深めていきたい。

オール沖縄と県政発展へ連帯

 ―オール沖縄の将来的な姿は。

 オール沖縄は、ウイングの広い人たちが取り組んでいる形です。運動体としての「オール沖縄会議」や、さまざまな市民団体とも真摯に協議しながら一緒に連携していく。辺野古新基地建設を断念させることは当然、私の一丁目一番地の政策・公約です。その方向性で、お互いが認めあえる取り組みを強化し、各市町村の住民の方々ともよく意見交換しながら県民の暮らし、生活の向上、県政の発展がのびやかに進められるよう連帯していきたいと考えています。


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