2022年12月29日(木)
主張
東京五輪巨額費用
膨張させた構造にメス入れよ
東京五輪・パラリンピックの大会開催経費は総額1兆6989億円だったとする調査結果を会計検査院が21日、国会に提出しました。大会組織委員会が6月に最終報告として公表した総額より2751億円上回っています。検査院によると、大会開催の関連経費を合計すると約3兆6800億円にのぼりました。2013年に招致委員会が見積もった経費は7340億円で「コンパクト五輪」を掲げていました。それが約5倍に膨張しました。「国策」と位置付けられた五輪には巨額の税金が投じられています。政府、東京都、組織委の説明責任は曖昧にできません。
チェックの仕組みがなく
検査院は、国の支出総額を4668億円としました。組織委の公表額1869億円の約2・5倍です。国が経費から外していた国立競技場の整備費や選手強化策などを国の支出として認定しました。
国として、開催経費の総額を取りまとめていないこと自体が大問題です。今度の検査院の報告がなければ、経費の全体像は闇に葬られるところでした。検査院は、総額を示さない国の姿勢を問題視し、「国際的な大規模イベント」について総額を適時明らかにする仕組みの整備などを求めました。
もともと招致段階で示された経費は、小さく見せる意図に沿ったもので、その額には到底収まらないと指摘されていました。組織委は、招致決定後に試算を繰り返しましたが、膨張することは避けられず、19年には1兆3500億円にのぼっていました。
最大の問題は、組織委、国、都が事業内容や計画プロセスなどをまともに公開せず「ブラックボックス化」したことです。具体的な事業数や支出額を明らかにすることに一貫して後ろ向きでした。検査院は18年と19年に東京五輪の国の支出について調査し、「全体像を把握し、対外的に示す」ことの必要性を強調してきました。しかし、国は姿勢を変えませんでした。
12年のロンドン五輪では、開催5年前から会計検査院や国会が費用を繰り返しチェックし、国民に示すことで経費の肥大化を一定抑制できたとされています。東京五輪では甘い見積もりの上に、歯止めをかける仕組みもつくらず、安倍晋三政権も菅義偉政権も「開催ありき」で突き進みました。コロナ感染拡大による1年延期によって、さらに費用はかさみました。
組織委は6月に最終報告をまとめた後に解散し、経費に関する重要文書の開示義務はないなどとしています。無責任な言い訳は通用しません。組織委は自ら進んで開示することが求められます。国会や都議会で国、都、組織委をただしていくことも不可欠です。
汚職・談合の温床ただせ
東京五輪では、広告最大手「電通」出身の組織委元理事が汚職事件で逮捕され、多くの広告会社も談合疑惑で捜査されています。利権に群がる温床をつくった構造的な問題と、五輪経費の膨張は無縁ではありません。汚職事件では森喜朗元首相(元五輪組織委会長)などの関与にも疑念が消えません。ゆがんだ構造にメスを入れなければなりません。招致段階から金銭授受にまつわる問題が絶えなかった東京大会の数々の疑惑の真相を全て国民の前に明らかにすべきです。このままで30年札幌冬季五輪の招致などあり得ません。








