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2022年12月27日(火)

欧州左翼との連帯求めて 緒方副委員長に聞く(3)

ジェンダーから外交まで

 スウェーデン左翼党のマルタ・アギーレ国際責任者は、ロシアの侵攻により、中立・非同盟の伝統の国で世論がどう一変したかを生々しく語りました。

 連立を組んでいた社会民主労働党が北大西洋条約機構(NATO)加盟申請を提起すると、左翼党は、「加盟は国をより危険にする」、「国際安全保障は、国際法、国連のもとグローバルな枠組みであるべきだ」と明確な反対を表明しました。

 9月の選挙後、極右の支援を受けた右翼政権が発足し、首相が米国の核兵器の領土内への配備容認発言をするなど、NATOへの傾斜が大きく強まっていると指摘。ロシアの侵略前は、NATO問題は抽象的で低調な議論にすぎなかったが、戦争後は、具体的な脅威に変わり、脅威というシンプルな「根拠」で、軍事費の大幅増額など何でも通るがごときだと強い懸念を表明しました。

 左翼党は、それまで反対だった武器輸出・供与は、隣国フィンランドへのロシア侵攻があったら反対できないとの理由で容認。軍事予算のGDP比2%への増額も条件付きで賛成した苦悩の対応を語りました。

 私からは、ジェンダー平等の歴史的経過を聞きました。戦後から1960年代まで、“パパは新聞を読み、ママは料理する”といった男女の役割における固定的で遅れた実態があったが、60年代後半から70年代に女性解放運動が高揚する中で、覚醒が進み、保育所の大幅増設、男女の賃金格差是正、男性の育児休暇義務制が実施され、86年に平等法ができ、クオータ制で促進されたとの説明を受けました。

 私が80年代前半に左翼党大会取材でクオータ制の議論を聞いた体験と符合しました。国会議員の男女比が半々なのは、選挙が比例代表制で、左翼政党が率先して候補者リストで女性・男性を交互にする慣行を開始し、流れができたと語っていました。左翼党の国会議員24人中女性は17人と7割を占め、党執行委員会の7割が女性で、党首も女性です。

平和と気候で協力の提起

 ドイツ左翼党のウルフ・ガレルト常任幹部会委員・国際委員会責任者は、ドイツ革命運動の由緒ある党本部で迎えるなり、「私たちは歴史的な岐路にある。左翼・進歩政党の協力強化はきわめて重要だ」と切り出しました。

 ウクライナへのロシアの戦争について、「ロシアの侵略は想定外だったが、それは、ロシアの歴史を背景とする帝国主義の現れである。NATOが今回のロシア侵攻の直接の原因とはみなしていない」と述べました。

 先方からは、▽平和問題と気候変動の問題は深く関連しており、両課題で協力したい▽アジア・太平洋地域に視野を広げる上でも重要な両党の関係の再活性化を具体化したい―との提起がありました。

視聴覚を駆使した会談

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(写真)会談を終え握手するオランダ社会党のバンデン政治・外交顧問(右)と緒方氏=11月12日、ハーグ

 オランダ社会党とは、訪問準備のためにオンラインで2度にわたり会談。空港で出迎えてくれたブラウン国際局員とはアメルスフォールトにある党本部まで早速、列車内会談となり、ベルギー労働党とは、非常に親しいとの説明がありました。両党は出自が似ていて、70年代創立の元毛沢東派の党です。ともに長く泡沫(ほうまつ)政党で、0・数%まで得票を落としました。

 オランダ社会党はそのもとで、「毛沢東語録」を教材にした教条主義を拒否し、「マルクス主義」を理論的基礎にしつつ国民の中に入り、国民の抱える問題を解決する方向を追求していきました。国会に初めて議席を得たのは94年。解散したオランダ共産党に代わって左翼の位置を占めています。

 フクストラ書記長は会談の冒頭から50周年を迎えた党の歴史、党活動を短い動画でプレゼンテーション。視聴覚を駆使した外国との会談は初めてで新鮮でした。

 宣伝と選挙はSNSを戦略の中心に据え、200人収容のホールの一角にあるスタジオでプロ級の動画を頻繁に制作しています。宣伝は、誰もが理解できる言葉でシンプルが方針と説明しました。

 書記長の案内でハーグに場所を移し、元キャリア外交官で党政治・外交顧問のミシェル・ファン・バンデン氏らと安保外交問題での会談となりました。彼は、その日、オランダ国会に、現在GDP比1・65%の軍事予算を4割増やす法案が提出されたとの生々しい議会報告から始めました。

 バンデン氏が述べた主な点は次のようなものでした。▽NATOは、「民主対専制」という図式で世界の分断化をはかるが、独断的な誤りだ▽排除の論理に反対し包摂的な外交的な対応のネットワークを強化したい▽NATOの超国家的な軍事化をはじめ軍事ブロック反対を強化しよう▽政府は国会の議決によって核兵器禁止条約締約国会議にオブザーバーを派遣し、政府から国会に報告書が届き、重要なステップを経た。核抑止論の誤りを強調していこう―。

 私から、「欧州安保協力機構(OSCE)という合意がつくられていたのに、戦争が起きたが」と問うと、「政府間上層の合意で、欧州各国の国民間に根ざしていない脆弱(ぜいじゃく)性があった」と述べていました。

 深夜までの3時間の意気投合は「忘れえぬハーグの夜」となりました。(つづく)


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