2022年12月24日(土)
きょうの潮流
♪真っ赤なお鼻の/トナカイさんは―。街に響くクリスマスの歌。米国の音楽家が童話をもとにつくった「赤鼻のトナカイ」もその一つです▼原詞はトナカイの「ルドルフ」がサンタクロースから「君の明るい鼻でそりを案内してくれないか」と頼まれるという内容。実際に毛細血管が密集するトナカイの鼻は、いつも温かい血がめぐり極地での生活に欠かせない役割を果たしています▼北極圏周辺に生息するトナカイ。とくに野生のそれが数多くみられるアラスカではカリブーと呼ばれ、季節によって何万頭もの群れが長い距離を大移動します。その壮観さに魅了され、撮り続けたのが故・星野道夫さんでした▼山をこえて川を渡り、オオカミやクマ、蚊の大群に襲われながら行進するカリブー。ツンドラのかなたから現れ、ツンドラのかなたに去っていく姿を、大いなる自然とともに生きた写真家は極北の放浪者と名づけていました▼今年は星野さんの生誕70年。改めて足跡をたどった写真展が東京都写真美術館で開かれています。すべての生命の営みを慈しむようなまなざし。太古からの風景をきりとった作品は、死後26年たっても心に問いかけてきます。人間はどこへ向かおうとしているのか▼すさまじい勢いと速さで、あらゆるものが伝説と化していく現代。生物多様性の危機が叫ばれ、人類の基盤も崩れかけています。われわれをとりまく自然や命。星野さんが世に伝えたように、それこそが、かけがえのない天からの贈り物のはずです。








