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2022年12月18日(日)

安保3文書 密室協議

首相「問題ない」発言に怒り

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(写真)本紙が情報公開請求した「防衛力強化加速会議」の議事録は全て黒塗りでした

 岸田政権は16日の改定安保3文書の閣議決定で、「専守防衛」の基本原則を投げ捨て、敵基地攻撃能力の保有に踏み出しました。戦前の反省を踏まえ、「平和国家」として歩んできた国の姿を根本から変える決定を、まともな国会審議や国民の意見も聞かないまま強行したことに強い批判の声が上がっています。首相が16日の会見で「(決定)プロセスに問題はない」と正当化したことが、さらに怒りを広げています。

 首相は会見で「防衛力強化の内容、予算、財源の三つを本年末に決める方針」を国会でも説明してきたと強弁しましたが、実態は何ら説明していません。例えば日本共産党の小池晃書記局長が、長距離ミサイル1千発超の保有を政府が検討しているとの報道についてただすと、岸田首相は「報道には答えられない」(10月の参院本会議)と回答を拒否。井上哲士議員が4月の参院外交防衛委員会で敵基地攻撃の対象範囲について質問しても、岸信夫防衛相(当時)は「国家安保戦略作成過程で検討する」と答弁しました。つまり、「検討過程」は一切明らかにせず、結果だけを押し付けるというものです。

 また、岸田首相は「丁寧なプロセス」の根拠として▽国家安全保障会議(NSC)4大臣会合▽国家安全保障局(NSA)でのヒアリング▽政府有識者会議▽与党実務者協議―などを挙げました。しかし、いずれも政府与党内の会合であり、議事録が公開されない「密室」での会議です。

 NSAでのヒアリングに招かれた顔ぶれを見ると、谷内正太郎国家安全保障元局長や北村滋前局長、折木良一元統合幕僚長、泉沢清次・経団連防衛産業委員長(三菱重工社長)など「身内」が目立ちます。敵基地攻撃能力保有の検討という憲法9条に関わる問題が主要議題なのに、憲法学者は一人も招かれていません。

 さらに、有識者会議の議事録は非公表で、公開されているのは発言者の氏名を伏せた議事概要のみとしているなど、まともな情報公開もなされていません。

 これに関して、本紙は昨年11月21日から防衛省内で開かれた「防衛力強化加速会議」の議事録や配布資料について情報公開請求しましたが、開示文書は全て黒塗りでした。2013年12月、政府が最初の国家安保戦略を決定した際に開かれていた同様の会合についても、本紙は情報公開請求しましたが、その際は多くが開示されていました。岸田政権は、「隠蔽(いんぺい)」体質が批判されてきた第2次安倍政権以上の「隠蔽」体質といえます。

 「勝手に決めるな」―。安保3文書を閣議決定した16日朝、首相官邸前で市民が抗議の声をあげました。岸田政権が国民の声を聞かないのは、裏返せば国民の声を恐れているからです。民主主義破壊を許さない世論と運動が急務となっています。

 (斎藤和紀)


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