2022年12月15日(木)
きょうの潮流
祖国へとつながる、シベリアの青い空。その美しさをどんな思いで眺めていたのか。何年も捕らわれ、極寒の地で飢えと重労働を強いられながら、生の喜びと希望を失わなかった人▼先週公開された映画「ラーゲリより愛を込めて」。主人公は第2次大戦後、ソ連によって抑留された山本幡男(はたお)。収容所の過酷な状況の中でも人間らしく生きることをあきらめず、仲間たちを励まし心の支えになりました▼「人間をまっとうしていく話」。演じた二宮和也さんが言うように、極限のもとで人間として生きる勇気や意味を問いかけます。同時に戦争や抑圧がいかに人間の尊厳を奪うかを▼ノンフィクション作家の故・辺見じゅんさんによる『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』が原作です。待ち焦がれたダモイ(帰国)もかなわず無念の死をとげた山本。その遺書を仲間が記憶し、日本でくらす家族のもとへ届けるという奇跡の実話も▼がんに侵され病床でつづった別れの手紙。4人の子どもたちには「どこまでも真面目な、人道に基く自由、博愛、幸福、正義の道を進んで呉(く)れ」。そして、最後に勝つものは道義であり、誠であり、まごころであると呼びかけます▼瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督は分断ではなく、思いを共有する大切さが希望や明日へとつながっていくと。父からの魂のさけびを受け取った山本厚生さんも本紙に。「(父は)いつか人権が大切にされ、人々が対等に生きる社会がくると信じていたのでしょう。これこそ目指すべき未来社会なのだと私は思っています」








