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2022年12月15日(木)

主張

巨額軍事費の財源

禁じ手・流用 手当たり次第か

 岸田文雄政権が2023年度以降の大軍拡の財源を確保するため、増税や国債発行を手あたり次第に打ち出そうとしています。歴代政権ができないとしてきた立場を覆し、暮らし、憲法、平和を破壊する暴挙です。

増税も国債も見境なく

 首相は軍事費を今後5年間で総額43兆円に増やすとともに、財源の不足分は増税でまかなうよう指示しました。法人税などの増税や東日本大震災の復興特別所得税の増税・流用が与党内で検討されています。

 法人税は安倍晋三政権下で大幅に減税され、大企業は巨額の内部留保を積み増しました。しかしその分は賃上げやグリーン投資に使われるべきです。軍拡財源にするなどとんでもないことです。

 復興特別所得税は、所得税に上乗せされ、所得税を払っている人すべてが負担しています。徴収期限を現行の2037年から延ばし、増収分を軍事費に充てるといいます。国民全体への増税です。

 東日本大震災の死者・行方不明者は「災害関連死」を含めて2万人超です。復興庁によると、今なお3万人以上が避難しています。復興は進行中です。被災者、避難者、被災自治体のために使わなければならない予算を軍事費に流用できる道理は何もありません。

 さらに岸田政権は、自衛隊の施設整備の一部財源を、国の借金である建設国債で調達することを検討中です。

 国が野放図な借金漬けに陥らないよう国債の発行には厳しい規制が設けられています。財政法は、国の歳出は「公債又は借入金以外の歳入」を財源とし、例外として、公共事業などのために国会が議決した金額の範囲で公債を発行できると定めています。

 戦前・戦中、戦費調達のために政府が巨額の国債を発行し、日銀が引き受けました。そのつけは、戦後、極端なインフレの形で国民が生活を犠牲にして払うことになりました。軍事費調達のための国債発行はこうした痛苦の歴史に対する反省を踏まえて禁じ手とされました。

 自民党政府は、これまで国債を軍事費の財源としない立場をとってきました。戦後、建設国債が初めて発行された1966年の国会で福田赳夫蔵相は「軍事費の財源として公債を発行することはしない」「防衛費は消耗的な性格を持つ。公共事業費等に準ずることは適切でない」と答弁しました。

 岸田首相自身、10日の記者会見では軍事費増額の財源として国債による調達は「とりえない」としていました。

大軍拡そのものをやめよ

 首相は13日の自民党役員会で軍事費の財源について「今を生きる国民が、自らの責任として、しっかりその重みを背負って対応すべきものだ」と述べました。

 7月の参院選挙公約には増税などまったくありません。選挙が終わったら軍拡財源の確保に「責任」を持てと国民に負担を押し付けるのは、あからさまな民主主義の蹂躙(じゅうりん)です。

 自民党内や閣内からも増税に異論が出ていますが、問題は財源調達の方法ではありません。軍事対軍事の対決をあおり、軍事費を5年間で倍増させる路線が間違っています。軍拡そのものを断念すべきです。


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