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2022年12月14日(水)

逃げる岸田政権 対決する日本共産党 臨時国会69日(1)

統一協会被害者救済法

実効性求め独自修正案

 コロナ禍で苦しむ国民の暮らしや経済の再建、外交・安全保障、エネルギーなど、国の針路をめぐる重大問題が問われるなか、10日に閉会した臨時国会。追及から逃げ回る岸田政権と真正面から対決した日本共産党の姿を振り返ります。


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(写真)与野党書記局長・幹事長会談。左は小池晃書記局長=11月24日、国会内

 「ここで終わらせるのではなく、次の国会でも審議してもらい、一人でも多く救ってほしい」

 統一協会の被害者救済法が可決・成立した臨時国会最終日の10日、参院本会議場には、元妻による献金被害を訴えてきた橋田達夫さんの姿がありました。声を上げた被害者や問題に取り組んできた弁護士、世論の力が、悪質な寄付の勧誘の法規制に消極的だった岸田文雄政権を動かしました。

 しかし、統一協会の被害の中心であるマインドコントロール(洗脳)下の寄付の勧誘を明確に禁止せず、多くの被害者を救済できるものにはなりませんでした。

世論に押されて

 当初、政府・与党は臨時国会での救済法の提出を想定していませんでした。しかし、被害者の告発で、統一協会の悪質な活動による家庭や生活破壊の深刻な実態が次々に明らかに。“正体を隠して接近し、教義を植え付けて洗脳した上で、高額献金をさせる悪質な寄付勧誘を禁止しなければ、被害者を救済できない”―被害者救済の新法を求める世論が急速に高まりました。

 こうした声に押され岸田首相は10月19日、救済法を「臨時国会を含め早期に提出していきたい」と表明。11月9日には自民党の茂木敏充幹事長が各党の書記局長・幹事長に協力を要請するまでに事態を動かしました。しかし、政府案の概要は個人を「困惑」させて行う寄付の勧誘などを禁止するだけのものでした。

 「ほとんどの被害が救済できない」との批判が高まる中、茂木氏は教団など法人の配慮規定として「個人が適切な判断をすることが困難な状況にしない」ことなどを盛り込む案を提示。しかし洗脳下の「困惑」を伴わない寄付勧誘の禁止には背を向け続けました。

 日本共産党の小池晃書記局長は、寄付時には洗脳下にあり「困惑」していない事例が多いとして「『正常な判断ができない状態にあることに乗じた』勧誘を禁止する」などとするよう提起。しかし、修正はないまま、自民、公明、立民、維新などの合意で審議入りしました。

大きな足がかり

 日本共産党は洗脳下の寄付勧誘の禁止などを盛り込んだ修正案を衆院に独自に提出。憲法が保障する「信教の自由」などを持ち出して難色を示す政府に、洗脳こそ信教の自由の侵害だと追及しました。

 宮本徹衆院議員や山添拓参院議員らが、洗脳下の寄付を禁止する修正は憲法の範囲内でできると衆院法制局とも整理したと主張。宮本氏は「党の修正案を丸のみすべきだ」と迫りました。参院の参考人質疑では全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士も修正案について「被害者救済にかなり役立つ」と評価しています。

 修正案は共産党以外の反対で否決されました。ただ、同法の付則には2年後の見直し規定が盛り込まれました。日本共産党が救済法を実効あるものとするために最後まで奮闘したことが、今後の見直しへ大きな足がかりをつくりました。

長年の癒着 被害者と徹底追及

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(写真)統一協会問題野党国対ヒアリングで証言する元2世信者の小川さゆりさん(奥中央=仮名)=10月4日、国会内

 統一協会の被害者救済法をめぐっては、衆院本会議で採決が行われた日の夕方に参院で審議入りする乱暴な国会運営も行われました。日本共産党は、政府から概要が示された当初から「実効ある法案にする必要がある」と党派を超えたオープンな議論を主張。尾辻秀久参院議長に会期延長を申し入れ、十分な審議時間を保障し実効性を確保するよう呼びかけました。

 しかし、自民、公明、立民、維新などの合意で会期は延長されず、会期末の土曜日に審議を行うという異例の対応で同法は成立しました。重要法案にもかかわらず衆参の委員会での審議時間は約26時間です。参院の審議では、法案に賛成した党の議員からも「これで充実した審議と言えるのか」との声が上がりました。

 「これで終わりにはできない」。日本共産党の小池晃書記局長は同法成立後、法案を直ちに見直して実効ある救済制度をつくることや、統一協会への解散命令の請求、自民党との癒着の徹底解明を提起しました。

 参院の参考人質疑で、統一協会の元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は、多くの被害者が妨害をうけ、体調を崩しながらも被害を告発し続けてきたわけを訴えました。「政府が本当に動いてくれるのか信じられない。被害拡大の張本人の与党側にそのような動きが見られないから、被害者がそこまでやるしかなかったという事実を忘れないでいただきたい」

 岸田首相には、この声を正面から受け止める責任があります。

自民・議長・政府丸ごと汚染

自民党の点検結果(追加報告を含む)(人)
統一協会と接点があった議員 180
氏名を公表した議員 125
点検項目ごとの人数
会合への祝電など 99
広報紙でのインタビューなど 24
関連団体の会合であいさつ 102
会主催の会合への出席 13
協会や関連団体への会費などの支出 49
寄付やパーティー券などによる収入 29
選挙のボランティア支援 17
選挙支援の依頼や動員などの受け入れ 2

 岸田政権が十分な国会審議も行わず、法律も実効性あるものにならなかった背景には、自民党と統一協会の深刻な癒着関係があります。自民党が9月8日に公表した「点検」結果で、379人の同党国会議員のうち約180人が接点を持っていたことが判明。統一協会と接点を持つ閣僚ら政務三役は4割に及び、自民党・議長・政府が丸ごと汚染されていたことになります。

 日本共産党は臨時国会を「統一協会追及国会とすべきだ」と主張し、癒着解明を要求。志位和夫委員長は衆院本会議の代表質問で、岸田首相が統一協会と「関係を断つ」と言いながら行動が伴っていないとして、(1)自民党としての責任をもった調査(2)政権としての調査(3)行政がゆがめられた疑惑の調査(4)安倍元首相の癒着の調査(5)半世紀に及ぶ歴史的癒着の調査―の五つを提起。しかし岸田首相は明確な答弁を避け、癒着解明に背を向けました。

 臨時国会最終日の12月10日、山添拓参院議員が「自民党が統一協会と癒着を深めて被害を拡大してきた認識があるか」と迫りましたが、岸田首相は「さまざまなケースがあった」と繰り返すだけ。被害を拡大したという認識を示せないことが改めて浮き彫りとなりました。

 統一協会と自民党の癒着によって、行政がゆがめられた疑惑も未解明です。統一協会の名称変更の経過をめぐっては、宮本岳志衆院議員の質問に対する答弁で永岡桂子文部科学相が、2015年の名称変更当時、下村博文文科相に報告した資料が存在することを認めました。下村氏の参考人招致と資料の国会への提出は待ったなしです。

 穀田恵二衆院議員は東アフリカ・モザンビークの統一協会関連団体の派遣員に、政府が外務大臣表彰を与えていたことを告発。質問を受け同省は外務大臣表彰を取り消しましたが、その後、統一協会の関連団体が西アフリカ・セネガルで開校・運営する学校に、政府開発援助(ODA)として955万円余の無償資金協力を行っていたことも穀田氏の追及で発覚。この問題はいまだ調査中です。

 統一協会と自民党国会議員が選挙の際に事実上の「政策協定」を結んでいた問題では、井上哲士議員が参院本会議で、「外国に本拠を置く団体と政策協定を交わすことは、内政干渉につながる」と追及。岸田首相は「さまざまな団体と書面のやりとりは行っている」と開き直りました。

解散請求解釈 1日で変更

 「民法の不法行為も該当する」―宗教法人の解散命令請求を行う際の「法令違反の要件」について、岸田首相が10月19日の参院予算委員会でこう答弁しました。前日までは法令違反の要件を刑法罰に限定し、「民法は該当しない」と答えていましたが、一夜で政府解釈を転換。国会審議中の変更など異例中の異例です。前代未聞のこの答弁変更の裏側には、野党と世論の厳しい追及と被害者の奮闘がありました。

 政府はもともと、オウム真理教への解散命令の際に東京高裁が示した「刑法等の実定法規の定める禁止規範または命令規範に違反」などの基準にこだわり、統一協会の違法性が既に明らかになっている民法上の不法行為では「解散命令を請求できない」と消極的な態度を取り続けていました。

 民法は該当しないとする政府解釈の高い壁を打ち崩す力となったのが、共産党や立憲民主党など超党派の野党による統一協会問題の合同ヒアリングです。32回にわたる聞き取りの中で、「未成年のとき7日間断食させられた」「家族が全てばらばらになった」など政府関係者の前で声を詰まらせながら話す被害者の必死の訴えから、被害実態の広さと根深さが明らかになっていきました。

 被害者の切実な訴えと世論の批判を受け、岸田首相は10月17日に統一協会に対し、宗教法人法に基づく「報告徴収・質問権」を行使すると表明。質問権では、統一協会の民法上の不法行為を認めた判決が多数あることを理由に挙げたものの、解散命令請求の要件には「民法は該当しない」としたままでした。

 これに対し、日本共産党の宮本徹衆院議員は「質問権をいくら行使しても、統一協会の役員が刑事罰を食らわない限り解散命令請求をしないことになる」と追及。ヒアリングで問題意識を共有していた立憲民主党も「解釈を変えない限り解散請求できない」(長妻昭衆院議員)と述べるなど、野党からいっせいに批判の声があがり、政府解釈を変えさせる原動力となりました。

 統一協会をめぐっては、組織的な養子縁組を無許可で行っていた問題が新たに発覚し、山添氏は「養子縁組のあっせんを許可も得ず継続的に行っていた事実はこれだけで重大だ」と訴えました。政府は既に、統一協会の民法上の責任が認められた事件を少なくとも22件把握しています。「民法の不法行為が該当する」のが政府解釈であれば、解散命令請求にただちに踏み切るべきです。


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